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悪役令嬢の中身の侍はシナリオを斬る  作者: あらたまのみこと


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第五話:侍は呪いの要因を考えてみる

予定よりもはるかに早く公戻った俺を見て、マリーや従者たちは一様に驚き、心配顔を浮かべた。俺は簡単に離宮で起きた出来事をかいつまんで伝え、すぐに本宅へ向けて伝令の者を走らせた。

そうして離宮から王都の公爵邸へ戻り、急ぎ旅の準備を整えると、俺は領地にある公爵家の本邸へと向かった。


本邸の門前では、事前に伝令を受けていた公爵閣下をはじめ、ご母堂殿、そして兄君までもがわざわざ出迎えてくれていた。


「お久しゅうございます。ただいま戻りました」


車から降り、一礼した俺に、公爵閣下が重厚な笑みを浮かべた。


「おお、よく戻ったな、アンジェリカ。茶の準備をさせておる。旅の埃を落としたら、じっくり話を聞かせておくれ」


「かしこまりました」


(……湯浴みなど、急ぎの報告を終えた後で良いと思うのだがな)


内心でそう思いはしたものの、マリーや侍女軍団がそれを許してくれるはずもないことは、これまでの経験で嫌というほど分かっていたので、大人しく諦めることにした。

湯浴みを終え、用意された着替えを見て俺は思わず顔を顰めた。

用意されていたのは、相変わらず『ワンピース』とやらいうヒラヒラとしたスカートの服だったからだ。


「……公爵家の中にいる時まで、このような落ち着かぬ格好をしたくはない」


俺が露骨にゴネると、侍女たちは困り果てたような顔をした。

まったく、乗馬服があるのだから、室内着だって同じようなもので良いはずだ。


「そうして不服そうな顔をするくらいなら、最初からアンジェリカ殿に似合う、動きやすく上質なシャツとズボンを用意すればよかろう? なぜ仕立てぬのだ」


俺が首を捻って提案すると、マリーをはじめ侍女たちがハッとしたように目を見開いた。


『……その発想はございませんでしたわ!』


彼女たちは一瞬で爛々と目を輝かせ、「アンジェリカ様に似合う最高級のパンツスタイル」を脳内で構想し始めたらしく、俄然張り切り出していた。


(……まあ、よく分からんが、あの裾の広がるスカートとやらを履かずに済むなら何でも良いのだがな)


俺は与えられたシンプルなシャツとズボンに身を包み、身だしなみを整えると、公爵閣下たちの待つ応接間へと向かったのだった。


「お待たせいたしました」


俺が軽く挨拶をして席につくと、公爵閣下はお心が晴れやかなご様子で、ご母堂殿も兄君もにこやかに微笑んでいらっしゃる。……はて?


「アンジェリカ、此度のこと、実によくやったな」


「……?? どのあたりでございますか?」


「王家にしっかりとお前の口から責任を持たせ、報告を求めただろう。先ほど、王家より早馬で速やかな経緯報告と謝罪の書状が届けられたのだ」


「ほう、こちらと入れ違いになりましたか。ですが、王家側が素早く事態を収めたのは重畳にございます」


「うむ。だが茶を送り届けた人物の特定には至らなかったそうだ。特徴を聞く限り、離宮へ向かった者たちでもなく、当然我が家からもそのような茶は出しておらん。むしろ、公爵家が届け出たのは『王太子殿下との婚約者候補辞退』の申し出くらいだからな」


その言葉を聞き、俺はお茶会で感じた王妃の不自然な態度について伝えねばならんと思い出した。


「公爵閣下。実は離宮でのお茶会にて、私は刻限通りに到着したにも拘わらず、なぜか遅参した扱いにされておりました。また、王妃殿下がアンジェリカ殿へ凄まじい『憎悪』の混じった瞳を向けておられたのです。……ですが不思議なことに、その憎悪は俺が茶の違和感に気づき、静かに問い詰めた瞬間、綺麗に消え去っておりました。……王妃殿下にそれほど憎まれるような心当たりはおありですか?」


「……儂にはまったく思い当たる節はないな。お前はどうだ?」


公爵閣下がご母堂殿へ問いかける。


「憎まれるようなことなど何も……いつも『よくできたお嬢様』とお褒めいただいておりましたわ。……あるとすれば、王太子殿下に関する愚痴を少々」


「愚痴、でございますか?」


「ええ。同じ家庭教師に師事しながら、王太子殿下の学びの進みがアンジェリカよりも遅いと……」


「それならば、私も聞いたことがあります。王家や高位貴族の子弟の中でアンジェリカは群を抜いて優秀でしてね。私の友人である侯爵家の子息も『幼少期は常にアンジェリカと比較されて参った』と零しておりました」


ご母堂殿の話を、兄君が友人の逸話で補強する。


(……ふむ。だとすれば、やはりそう考えるのが筋か)


「俺は、女神が口にしていた『世界から嫌われ、認められぬ』という言葉の真意を考えておったのですが……今回の件も、それと深く関係しているのではないかと思案しております」


俺の重々しい言葉に、公爵家の面々が真剣な眼差しを向けた。


「……何に関係があるというの?」


ご母堂殿が、どこか不安げに尋ねる。


「――『呪い』とは何か、という根本についてです」


応接間の空気が張り詰め、全員が言葉を失って生唾を呑み込んだ。


「いまのお話でアンジェリカ殿は、大変優秀なお方だ。……ですが、この『世界』から正当に評価されることはない。……しかし、ここにいるご家族や公爵家の配下の方々は、彼女の優秀さを正しく認め、愛しておられる」


俺は一人ひとりの顔を見回しながら言葉を継いだ。


「学園の教室とやらで、王太子は俺に対してあまりに無作法で理不尽な対応をとり、王妃殿下はお茶会で俺を貶めようとした。だが、公爵閣下やご家族に王室へ落ち度を突かれるような心当たりはない。さらに言えば、取り巻きとなった三家の令嬢たちでさえ、普段はアンジェリカ殿を立てておったはず……。この『差』はいったい何に起因すると思いますか?」


「……言いたいことが見えてきたぞ。王家にとって、我がエバーランド家は国家の柱石として無くてはならぬ存在。その証拠に、王太子の婚約辞退の申し出も受理しておらんのだ」


公爵閣下が膝を打ち、険しい顔で言った。


「……ええ。それなのに、王太子殿下はともかく、王妃殿下がわざわざ我が家の不快を買うような真似をするなど、国家の理屈としても不自然極まりありませんわね」


ご母堂殿も違和感の正体に気づき、眉をひそめる。


「うむ。あの青二才の愚行ならともかく、今回見せた王家の素早い幕引きと、お茶会での王妃殿下の陰湿な振る舞いは、真逆の対応と言っていい。……だとすれば、それが何によって引き起こされているか」


「……羨み、嫉妬……ですか?」


兄君が低い声で呟く。


「そうです。そう考えれば、不自然さに理由がつきます。アンジェリカ殿がどれほど努力し、誇り高くあろうとしても……その『完璧さ』が呪いによって歪められ、周囲の強い羨望と嫉妬を引き寄せ、ドス黒い悪意へと反転して襲いかかってくる」


俺が静かに告げると、応接間はまるで真冬の早朝のような、痛いほどの冷気と静寂に包まれたのだった。


「それは……地獄だ」


兄君が顔に手を当て、痛々しそうに悲痛な呟きを漏らした。


「努力をすればするほど周囲から嫌われ、貶められ、追い詰められる……。正しく評価されることもなく、ただ悪意の標的にされ続けるなど……まさに地獄そのものではないか……」


公爵閣下も、愛娘が置かれていた恐ろしい孤独と苦痛を思い描き、痛痛しい面持ちで言葉を搾り出す。


「そ、それを……何度も……ひとりで……ッ! アンジェリカ……!」


たまらず泣き出したのはご母堂殿だった。席を立ち、座っている俺の身体を優しく、力強く抱きしめると、「ごめんなさい……ごめんなさいね……」と涙で声を震わせて謝罪を繰り返す。 俺は柄にもなく狼狽えつつも、何も言わずにそっとご母堂殿の背中を優しく擦り続けた。

やがて少し場が落ち着くと、ご母堂殿は目元を拭って非礼を詫び、元の席へと戻られた。


「……それで、どうするつもりなのだ? 榊原殿」


公爵閣下が意を決したように静かな声で尋ねる。


「まだこの仮説に完全な確証を得たわけではありません。ですが学園という場所は、感情に流されやすい幼子(若者)ばかりの集団……アンジェリカ殿の存在を羨み、嫉妬する輩などいくらでも湧いて出ましょう。そこで周囲の変化を見極めつつ、まずは春まで様子を見ます」


「そこで『呪い』の確証を得る、ということだな」


「はい。そして確証を得たその時は――今度は『アンジェリカ』としてではなく、『榊原直之』として動くことをお許しいただきたい」


俺の申し出に、兄君が首を傾げて尋ねてきた。


「アンジェリカではなく、榊原殿として動く……? それはいったいどういうことですか?」

俺は思わず唇の端を釣り上げ、ニヤリと不敵に笑ってみせた。


「――圧倒的な『力』で、制圧いたします」


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


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AI利用状況設定については、設定にて「補助的利用(アイデア出し・資料調査・誤字脱字のスペルチェックなど、補助的な利用)」にチェックして投稿しています。

補助的利用については、「この設定は公開されません。※ただし、コンテストに参加されている場合や、商業化等で作品へのお問い合わせがあった場合など、関係する企業に伝達することがあります」

とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。

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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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