二十三話:侍は呪いの正体と対峙する
息を呑んで事の顛末を見守っていた貴族たちから、割れんばかりの驚愕のどよめきと、自然発生的な拍手が広がり始めた――その、まさに直後のことである。
「「「おお、お……ッ!?」」」
――ゾクリ。
背筋の凍り付くような、禍々しく重苦しい本物の殺気が真っ直ぐ俺に向かって放たれた。
「――近衛隊長グラハム・フォン・エイブス……!」
怯えた貴族の誰かが、現れた男の名を口にした。どうやら近衛隊長直々のお出ましのようだ。 しかし、悠然と歩み出てくるその男の眼光には理性の光がなく、ただただ不気味であった。
「アンジェリカ……。なぜ『運命』を受け入れない……」
どうにも様子がおかしい。言葉の端々に、生身の人間ならざる異質な響きが混ざっている。
「はてな。一体どんな戯れ言を『運命』と呼んでおられるのかな?」
「アンジェリカはここで退場せねばならんのだ。なぜ……抗う……」
こいつは――アナスタシアの言っていた『シナリオ』そのものの化身ではないのか? 俺自身、近衛隊長とは何の面識もない。そして今、目の前で対峙しているこの存在が、血の通ったまともな人間であるとは到底思えなかった。
「なぜ俺が退場せねばならん。そもそも、何度も何度も退場を強いるその意図は何だ?」
「――物語のエンディングを、すべて迎えるために必要だからだ」
「そこに人の意志はあるのか!?」
俺は大広間に響き渡る声で問い詰めた。
「アナスタシアが言うように、仮にゲームとやらが存在し、あらかじめ決められたシナリオとやらがあったとしても、それはどこかの誰かが作って並べた『虚飾の賽』に過ぎん! ここは作り物か? 断じて違う! 泣き、笑い、己の意志と命でこの大地を生きていく者たちの血の通った居場所だ! 『役割』などという薄っぺらな言葉で人の生きざまを騙るな!!」
「……世界の理が、そうなっているのだ」
「知ったことか! そもそも、この俺をこの世界へと遣わしたのは女神と呼ばれる存在だ。お主はどこの神か、仏か?」
「神……? そんなものではない。私は人の望みの通り、望まれた形の結末を見せるために存在する機構……」
「おこがましいわ!!!!」
俺は雷鳴のごとく一喝を叩きつけた。
「主が神でも仏でもない只の仕組みに過ぎぬのであれば、人の生きざまに口を挟むな!!」
「アンジェリカ――お前は、ここで退場するべき者だ」
ふん。どこまでも出来の悪い怪異だ。人の道理も情も解さぬ、ただの奇妙なバグのような存在。 アナスタシアの言っていた「複数存在する選択肢」のすべてを、同一の世界線・同一の人物に強制的に実行・回収させるためだけに立ち現れる歪み。
――なるほど、人々の悪夢が見せる『あやかし』の類といったところか。
「あやかしめ……ならぬものは、ならぬ。俺が滅してやろう」
近衛隊長の姿をしたあやかしが長剣を抜刀して構え、禍々しい身体強化の光を全身に纏わせる。 俺もまた身体強化の魔力を巡らせ、じりと間合いを測った。
さすがは最高峰の近衛隊長というべきか、体勢に一切の隙がない。 敵の長剣に対し、こちらのミスリル十手ではあまりにもリーチの差が大きい。となれば――選択肢は『後の先』以外にない。
俺は重心を沈め、腰元に携えた十手に手を添えて居合の姿勢を取った。 先手は譲る。その上で、繰り出される技の冴えと速度で上回る!
相手の闘気が揺れた。
――来る!
「――『黄金剣・覇断』!!」
頭上から大広間の床ごと叩き割らんとする、破滅的な打ち下ろし。 それに対し、俺は覚悟を秘めて技を解き放つ。
「――『雷神剣・白閃』!!」
閃光の如き速度で下から斜め上へと十手を振り抜く居合の一撃。 抜刀の風圧に揺れ、十手の房に添えられた飾り鈴が――リンと清らかに鳴り響いた。
狙うは――相手の柄を握る「左手の指」!
ゴオオンッ――!!
衝撃波が爆発的な音を立てて弾けた。 俺の右側の床に大きな亀裂が走り、爆風の衝撃波によって右の耳切れから熱い血が伝う。
――だが、向こうは左手の親指と人差し指を砕かれ、大剣の握りを完全に失っていた。
俺はニイッと口元を歪め、間髪入れずに前へ踏み込んだ。 両手で扱う強力無比な大剣の最大の弱点――それは「腕(握力)」だ。片手の自由を失った大剣は、威力も速度も半減以下に落ち込む。
再び十手を振りかぶると、白レースに編み込まれた宝石が煌めき、朱紐の先の鈴が再びリン、リンと災厄を祓う高潔な音色を奏でた。
「――『雷神剣・八雷神』!!」
八雷神――古代神話において黄泉の国の伊邪那美命の身体に生じた八柱の雷神を由来とし、頭部、胸部、腹部、股間、両手両足の八箇所を、電光石火の速さで同時に穿つよう俺自らが編み出した絶対不可避の連撃奥義!
閃光となった十手の突きが、あやかしの身体を八方から抉り抜き、空中へと豪快に吹き飛ばした。
ズシンと床に転がった偽りの近衛隊長を見下ろし、俺は大広間の天井――天に向けてミスリル十手を掲げ、凛々しい声で言い放った。
ミスリル十手を天へと高く掲げ、凛々しい一喝を大広間に響かせた。
「――アンジェリカの災いとなりし『あやかし』の正体を、ここに暴いた! 汝が真にこの世界を統べる女神であるならば……この歪みたる悪夢を滅し給え!!」
十手の鈴が清らかに鳴り響いた、まさにその瞬間。 俺の言葉に呼応するかのように、天から神々しい白銀の光の柱が突如として穿つように降り注ぎ、崩れ落ちたあやかしの身体を優しく包み込んだ。
光がやがて静かに収まった後には――あの不気味なあやかしの気配は雲散霧消しており、そこにはただの人間として意識を失い倒れ込む近衛隊長グラハムの姿だけが残されていた。
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とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。
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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




