第十九話:侍は亜竜を討伐する
森土竜は俺を明確な標的と定め、一直線に突っ込んできた。 カパルが真っ先に叫んでいた通り、俺を噛み殺そうと長大な首が鞭のようにしなって伸びてくる。……首が伸びるとは、まるで巨大なスッポンのようだな。
俺は足袋を踏み締め、大きく横へ躍り出てその巨口を回避する。対人戦とは勝手が違い、魔物の特有の間合いを測る難しさを身をもって実感した。
避けられた森土竜の首が上を向き、その喉元が赤く怪しく発光し始める。
「ブレスだ! お嬢、火が来ます!!」
カパルの絶叫。なるほど、火の魔法を吐き出してくるというわけか。
ならば――俺のこれまで積み重ねてきた修練の成果を見せるとしよう。
「――風神剣」
『身体強化』の魔法と共に、己の剣に風の魔法を密かに纏わせる。
森土竜が巨大な顎を開き、俺に向けて灼熱の炎を吐き散らした。
「――谷切」
上段からの容赦ない振り下ろしに風の魔法を乗せて放つ。山谷を凄まじい速度で吹き抜けていく突風を刀身にイメージした、いなしの型。
森土竜が吐き出した灼熱の炎は、俺の放った風刃によって真ん中から綺麗に切り分けられ、俺の左右へと散っていった。
「「「「な、んだと……!?」」」」
煙の向こうから冒険者たちの絶句する声が聞こえてくるが、奴の首が伸び切っている今こそが絶好の攻め時だ。
俺は剣を即座に上段へと振りかぶり、全身の踏み込みと共に気迫を限界まで練り上げる。そのまま森土竜の頭頂部めがけて一気に振り下ろした。
「――雷神剣・雷轟」
ズドンッ!!という重厚な打撃音。 次の瞬間、ドォォォンッ!!と地響きを伴う凄まじい衝撃波が森土竜の頭部へ叩き込まれた。
頭蓋の砕ける凄惨な音と共に、衝撃波の余波によって周辺の地面がすり鉢状に激しく陥没していく。
森土竜の頭部は無残に凹み、目玉は飛び飛び、長い舌がダラリと口から溢れ出ていた。
「……死んだか?」
構えを解かぬまま森土竜の巨躯を検分するが、すでにピクリとも動く気配はない。どうやら完全に事切れ、仕留めたようだ。
思ったほどには強くはなかったな。……いや、俺のと言うか、アンジェリカの魔力を使った『身体強化』と『魔法剣』が想定以上に強力だったのかもしれん。
俺はゆっくりと構えを解くと、サーベルを鞘へと静かに納めた。
「「「お、おおっ……!?」」」
「お、お嬢! すげぇ……!」
「亜竜を一撃だと……!?」
「なんだあのお嬢様は……化け物か……?」
静寂を破り、集まってきた冒険者たちが騒然と口々に叫び出す。 俺は周囲を見回し、平静な声で尋ねた。
「皆に怪我はないか?」
「へい、全員無事ですわ! しかしお嬢、こいつはランクBの魔物ですよ!? 単独ならAランクの冒険者がパーティで対応するような化物です!」
「そうなのか? 弱点(首)をあからさまに晒して飛び込んできたのでな。大して苦労せずに済んだが」
「「「いやいや! その前に普通は火のブレスを刃で真っ二つに切れねぇから!!」」」
総ツッコミを受ける中で、不意に魔物たちが流れてきた西側の森林から、新たな数人の気配を察知した。 即座に身体を翻し、警戒姿勢をとる。
茂みを押し分けて姿を現したのは、装備の整った数人の冒険者たちだった。
「なんだ……? もう終わっちまってるのか?」
「あ、アルスの旦那!」
「カパル、これはどういう状況だ? 誰が仕留めた?」
「へい……それは、そちらにおわすお嬢様が……」
カパルがなぜか後ろめたそうな、気まずい顔つきで俺を指さす。
「こいつが……? この亜竜を……? え? お嬢様? 貴族の? この男装してるお嬢ちゃんが?」
カパルが慌てて両手を振り、アルスという男の口を塞ごうと必死になるが、粗野なアルスは止まらない。
「おいおいカパルよぉ! 吹き出すならもうちっとマシな嘘をつけっての!」
「いえいえ! 逆に聞きますけどねアルスの旦那、俺たち程度の面子でこいつを殺れると思いますかね!?」
「……そりゃ無理だな。……え? マジで……?」
アルスと呼ばれた冒険者は、俺の顔と巨獣の死骸を交互にチラチラと見比べると、自分の頭をぐしゃぐしゃと乱暴にかき回した。
「マジかよ……くそっ、せっかくの臨時収入(手柄)だと思ったのになぁ……」
俺の存在を無視して皮算用の会話を続ける二人に、俺は軽くため息を吐いて言い放った。
「カパル、いい加減にこの後の予定を話せ。このまま森から即刻撤退する手はずで良いな?」
「え? あ、はい! 森土竜を倒したとはいえ、他の魔物の動向も不透明ですからね。すぐに森を脱出しましょう。今から出れば、日が落ちる前には外に出られます」
「そうか、理解した」
俺は振り返り、即座にその場を立ち去ろうとしたが、アルスが俺の前に立ち塞がった。
「おい待てよ! こいつ(森土竜)はどうすんだよ!?」
「好きにしろ。だが、案内人の冒険者は貸さんぞ。全員無事に撤退させるまで、案内は継続してもらう」
「ふざけんなよ! 俺一人でこの巨体の解体と運搬をどうしろってんだ!?」
「知ったことか」
俺は抗議するアルスを容赦なく無視し、不安そうに固まっている貴族生徒たちの元へと歩み寄った。
「緊急事態につき、これより直ちに森から撤収する! 契約に基づき、冒険者諸君は指示に従い安全な案内を継続せよ。森を出た後は好きにするが良いが、これに反する者は契約違反とみなす」
パニックになりかけていた生徒たちのうち、「はい」と即座に返事をしたのは俺の側近三人娘と、公爵家派閥のわずかな貴族たちのみであった。残りの貴族どもは足腰を抜かし、不満そうに口を噤んでいる。
俺は冷徹な眼光で全員を一刺しし、静かに宣告した。
「――同意せぬ者は勝手にせよ。置いていく」
俺の発する本物の殺気と冷たい瞳に気圧され、だらしなく座り込んでいた貴族たちは悲鳴を上げるようにして慌てて返事をし、身なりを整えて撤退の準備を開始した。
「カパル! お前が冒険者どもをまとめろ。俺の指示を無視する者がいるならそれで構わんが……今後、公爵家を全面的に敵に回すと心得よ」
「ひ、へいっ!!」
カパルは額に冷や汗をダラダラと流しながら即答し、慌てて仲間の冒険者たちへ大声で指示を飛ばし始めた。俺は翻した裾を揺らし、自分のテントへ歩を進めた。
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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




