第十七話:侍は課外授業に参加する
早朝、提出しておいた参加者リストに基づき、森の案内役を務める冒険者たちが紹介された。
なんでもCランク以上の冒険者に対し、貴族との立ち回りや付き合い方を学ばせる研修の一環として、この程度の浅い森の案内を行わせるのだという。日本でいう「熊野詣の先達」のような役割といったところか。
全体の行程としては、まずは全員でひとつの大きな集団を成して大規模なキャンプ地まで移動し、そこから小集団(班)ごとに分かれて実際の狩りを行う手はずとなっている。俺たち公爵家派閥の先達(案内人)は、カパルという名の黒髪で細身の男であった。筋肉のつき方はさほど目立たないが、実に足取りが軽い。
「お主、職種は斥候か?」
「へい、よくお分かりで。お嬢……様?」
「ははっ、お嬢様で合っておるぞ」
男装姿の俺をまじまじと見て首を傾げるカパルの様子に、思わず笑みがこぼれた。どうにも昔、江戸の町で懇意にしていた岡っ引きの男に雰囲気が似ており、妙に親近感が湧く。
「そうですか。それではまず、拠点となるキャンプ地へご案内します。遅れそうな者がいましたら、近くの冒険者にすぐ声をかけてくだせぇ」
「うむ、よろしく頼む」
そうして俺たちは、公爵家派閥の生徒たちを引き連れてキャンプ地へと移動を開始した。それなりの大人数で整然と行軍しているためか、周囲から野生の生き物の気配が一切感じられない。 前方を歩くカパルへ声をかける。
「この森は、いつもこれほど生き物の気配が薄いものなのか?」
「そうですねぇ。俺たちも最近はあまり立ち入らない場所ですが、今日は特段少ない気がしますね」
「何か気になることでもあるか?」
「いえ、この辺りの獲物は弱い奴らばかりですからね。人間の大群がドカドカ入ってきたんで、気配を察して奥へ逃げたんじゃないですかね。こちらとしては静かで助かりますわ」
ふむ。魔物との戦闘を本業とするカパルがそう言うのであれば、ただちに異常事態というわけではないのかもしれん。仮に恐ろしい大物の魔物が侵入して縄張りを荒らしているのであれば、彼らのような熟練の冒険者なら真っ先に違和感を察知するはずだからな。
「お嬢様は結構な腕をお持ちのようで、随分と周囲を警戒されていますがね。この辺は近所の子供でも薬草や山菜を採りに来るような安全な場所です。キャンプ地に着くまでは、少し気を緩めてもらっても大丈夫っすよ」
「そうか。では、少しお言葉に甘えさせてもらうとしよう」
俺は軽く息を抜き、カパルの後を静かに追った。
◇
拠点となるキャンプ地へ到着したのは、歩き始めてからおよそ三時間ほどが経過した頃であった。 鍛え抜かれた騎士科の連中は慣れたもので息ひとつ乱していなかったが、普段体を動かさぬ一般の貴族生徒たちには相当堪えたらしく、その場に力尽きたように座り込んでいる者も多い。
到着したキャンプ地は見事なもので、大勢の人間が長期間滞在できるよう完璧に整備されていた。
「いやぁ、やっぱり貴族様のキャンプとなると俺たちとは違って豪華で羨ましい限りですな」
「やはり普段の冒険者とは違うものか?」
「そりゃもう! こんな立派な野営テントになんて、一生かかっても泊まれたもんじゃありませんよ」
「……この一度の課外授業のためだけに設営したというのか。無駄に手厚いことだな」
貴族たちはそれぞれ案内された豪華なテントへ移動し、羽を伸ばして休息を取り始める。食事の準備も専門の給仕が同行しており、まさに至れり尽くせりだ。いざ本物の魔物と対峙した際、この甘やかされた貴族どもが本当に戦えるのか、一抹の不安を覚えるほどの手厚さであった。
俺も割り当てられた自室テントへ入る。側近のマリアンヌ、カリス、アーリサの三人と同じ幕舎だ。俺たちは荷物を置くやいなや、即座に机上に地図を広げ、地理と配置の確認に入った。
「さて……問題は、王太子たちの陣取るキャンプ地と俺たちの拠点が遠く離れている点だな。俺たちがいるのは東側のキャンプ地。西側はグリンウッド侯爵家とブルレア辺境伯家が中心。そして中央の陣に、王太子とミルレット侯爵家が入っている」
この場においては、マリアンヌが俺の副将(参謀)役だ。
「はい。グリンウッド侯爵家は王国随一の精鋭武力を誇る名門ですから、王太子殿下の護衛も兼ねて西側を固めているのでしょう」
地形を確認すると、森の北側は足場のない切り立った厳しい断崖絶壁となっており、各キャンプ地と崖の間に広がる鬱蒼とした森林ゾーンがそのまま今回の「狩場」となる。
ーーーーー崖ーーーーー
( 狩場 )
西 中央 東
仮にアナスタシアの言う「大物の魔物」が西側に出現した場合、東に位置する俺たちが即座に駆けつけるのは困難を極める。
さらに王太子のいる中央陣営には、俺たちの案内人よりも遥かに腕の立つAランク級の冒険者や近衛の精鋭が配置されているという。魔物が出現したとしても、奴らの眼の前から獲物を横からかっさらうのは、一筋縄ではいかないかもしれんな……。
キャンプ地で一泊した翌朝。 俺たちは各班に分かれ、いよいよ魔物狩りの実習へと繰り出すこととなった。
あらかじめ冒険者たちが周囲の魔物の生態や生息域を完璧に調査してくれており、俺たちはレベルに応じた安全な狩場へと親切丁寧に案内される。
「なんと言おうか……もはやこれを『狩り』と呼んで良いものか……」
余りにも至れり尽くせりな過保護ぶりに、果たしてこれが貴族の経験として何の役に立つのか疑問を禁じ得ない。
「ははっ! むしろお嬢様のように不満を漏らす貴族様の方が珍しいですよ」
案内役のカパルが可笑しそうに笑う。
「まあ、お偉方にとっちゃ『魔物狩りに参加した』っていう格好のつく実績さえ作れりゃ、それで満足なんでしょうねぇ」
「……まあ、そういうことなのだろうな」
俺も苦笑いを返すほかなかった。 カパルにはあらかじめ「できれば中央寄りの狩場が良い」と希望を伝えてあったため、俺たちの班は東の拠点から西(中央側)に向かって足を進めている。
カパルは凄腕の斥候らしく、小型の魔物をこちらが気づく前に素早く発見しては教えてくれた。おかげで俺の手を出すまでもなく、側近のマリアンヌ、カリス、アーリサの三人に実戦の経験を積ませることができている。
――そして、昼も近くなったその時、『それ』は起こった。
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とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。
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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




