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悪役令嬢の中身の侍はシナリオを斬る  作者: あらたまのみこと


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第九話:侍はゲームのなシナリオを知る

交流会が明けると、学園は冬休暇に入り、いよいよ本格的な社交シーズンが幕を開けた。 エバーランド公爵家のもとには数々の夜会や茶会からの招待状が殺到し、俺はそれらに次々と出席することとなったのだ。

小癪なことに、あの天然娘アナスタシアの言う通り、俺が『男装の麗人』として社交場へ顔を出せば出すほど、アンジェリカ殿に対する周囲の悪意は目に見えて減っていった。


おまけに……どういう経緯があったのか、あの我が兄君(公爵家嫡男)があの天然娘と秘密裏に婚約を結ぶことになったという。 当のアナスタシアから「お姉様って呼んでくれていいのよ!」などと勝ち誇った顔で言われ、腹立たしいやら頭が痛いやら。俺は速やかに兄君へ「考え直せ」と忠告したのだが、


「良いお嬢さんじゃないか。令嬢としては少し変わっているが、頭も回るし美人だしね」


などと呑気に返され、俺は開いた口が塞がらなかった。

ただし、正式な婚約発表は当面伏せ、内密に進める手はずだ。アンジェリカ殿の婚約者候補が正式に降りない限り、婚約者候補の陣営内に味方を作っておく方が立ち回りやすいという結論に達したらしい。


こうして、公爵家と侯爵家の核心において、俺の正体とアンジェリカ殿にかけられた『呪い』、そして天然娘の持つ『げえむの知識』が全て共有されることとなった。


彼女の語る『げえむのシナリオ』とやらは到底信じがたい内容であったが、アンジェリカ殿が辿るはずだった破滅の顛末を聞く限り、大まかな流れは俺の推察と驚くほど合致していた。 であれば、その『シナリオ』を踏まえた上で策を講じるのが兵法というものだろう。


天然娘アナスタシアの知るシナリオとは、こうだ。

「『呪い』っていう現象自体はシナリオには出てこないんだけどね。ゲームの中だと、アンジェリカは『悪役令嬢』として最後にお仕置き(断罪)される役目なの」


「……アクヤクレイジョウ?」


「そう。物語の中で、必ず『悪役』として舞台を降りる役割を与えられた人物のことよ」


「むう……」


「こう言えば伝わるかしら。……桃太郎の物語における『鬼』よ。その鬼の役を、アンジェリカ様が当てはめられていたの」


「なるほど。話の結末は最初から決まっており、必ず討たれる運命にある……ということか」


「そう。アンジェリカ様は物語の中で、王太子の婚約者候補筆頭として登場するわ。公爵家の権力を傘に着て、他の候補を押し潰し、無理やり王太子妃になろうと画策するの」


「ふむ……しかし、お家の繁栄と存続のため、政略を用いて他を排することなど、何ら珍しいことではないと思うが?」


「いま言ったのは、私が知ってるあくまで『物語』のお話! いちいち茶々を入れないの!」


「……すまん」


「王太子殿下はその強引なやり方を嫌って、王国にとって最適な婚姻を望んでいたの。そんな時、学園で一人の低位貴族の少女と出会うことで、物語が本格的に動き出すわ」


「あの青二才(王太子)か……」


俺がぽつりと呟くと、天然娘がギロリと鋭い視線を投げかけてきた。俺はすっと両手を上げて「先を続けよ」と促す。


「健気で一途な努力家の少女に王太子は心を奪われ、徐々に親密な関係になっていくの。そして王太子の側近である『騎士団長の子息』『宰相の子息』『魔法省長官の子息』も、彼女と深く心を通わせていくわ」


「おい待て……一人の女子(おなご)が、同時に複数の高位男子と仲を深めるだと……?」


俺が言いかけると、アナスタシアはピシッと手のひらをこちらへ向けて制した。


「言いたいことは痛いほど分かるけど、そういう設定だと割り切って! 話が進まないから! ……で、それを知ったアンジェリカ様が王太子に彼女との接触について激しく抗議するんだけど拒否されて、公爵家や取り巻きを使って彼女に過激な嫌がらせを始めるの。最後には暴漢を雇って殺そうとまで試みるんだけど失敗。逆に全ての悪事を暴かれて断罪されるわ。そして王太子、騎士団長子息、宰相子息、魔法省長官子息のいずれかと彼女が結ばれて、めでたしめでたし……というのがゲームのお話」


「最後の『いずれかと結ばれる』というのは何だ? 相手が変わるのか?」


「『ゲーム』っていうのはね、遊ぶ人が選択肢を選ぶことで、物語の顛末(結末)を変えることができるものなのよ」


(……榊原さんに『男を攻略して選ぶ』なんて話をしたら、余計にややこしくなりそうね……)


アナスタシアは内心でそう呆れつつ、言葉を続けた。


「なるほど……鬼が鬼である限り、討伐される宿命は変わらぬか。たとえその鬼に、鬼なりの正義やことわりがあったとしても……な」


「私の知ってるゲームはそんな感じ。でもね……なんて言えばいいのかな。『もしも悪役が善だったら?』みたいな物語も、令和の時代ではすごく流行ってたのよ」


「どういうことだ?」


「たとえば『実は鬼は平和に暮らしていただけで、桃太郎の方が宝を奪いに来た悪者だった』みたいな感じ。配役と立場をひっくり返すの」


「……それはまた、随分と突飛で歪な話だな」


「でもね、物語っていうのは誰かが意図して作ったものじゃない? 作者が自分勝手に『善』と『悪』の配役を決めているだけなの。歴史だってそうでしょ? 戦争をした両者のうち、どちらか一方だけが100%悪なんて言えないじゃない。まあ……実際に命がけで戦ってきた当事者の榊原さんには、割り切れない話かもしれないけどね」


「……一理はある。だが、素直に受け入れがたい話でもあるな」


俺は静かに視線を落とした。 刀を抜き、血を流し、生きるか死ぬかの修羅場を潜り抜けてきた者にとって、戦の善悪を軽々しく入れ替えるなど容易に飲み込めるものではない。

アナスタシアは少し遠い目をして、静かに語りかけた。


「日本の歴史ではね……江戸時代が終わったあと、日本は大きな戦争を二回経験して、最後の戦争で負けて国が滅びかけたの。でも、そこから80年間……一度も戦争が起きない、すごく平和な時代が続いたのよ。だからこそ部外者として色んな歴史を観測できるし、自由に物語を作れるようになったの。……すごく、良い時代よ」


「そうか……。願わくばあちらに残した我が一族が、その『平和』とやらを享受できておれば良いのだがな」


俺は小さく息を吐き、静かに目を閉じた。


「まあ、だからこそ『令嬢アンジェリカ』ではなく『幕末武士の榊原直之』っていう配役の変更は、物語の運命を変える意味でも大正解だと思うわ」


「そうだな。その『げえむ』とやらと、この身に掛かる『呪い』の因果関係は依然として気になるところではあるが……お主の言う通り、配役そのものを根底から変えてしまうことで、何かしら良い影響が出る可能性は高い」


「大丈夫よ! だってもう『男装のアンジェリカ様』は学園公認のファンクラブが設立されて、会員数はうなぎ登りなんだから! 騎士団演習の公式見学会なんて、今や王国劇場のプレミアチケットより入手困難なんだからね! これほど推せる存在、他にいないわ!」


……先ほどまで大人びた分析力で真面目に語っていたというのに、急にいつもの『天然娘』へと逆戻りしてしまった。この情緒の振れ幅の激しさには、未だに胃が痛む。


「……コホン。そうだ、もう一つ気になったことがあったのだが」


「なに?」


「先ほどのお主の『げえむのシナリオ』の話の中で、王太子が学園で低位貴族の令嬢と親しくなったと言っておったな」


「え? 知らないの? 学園内じゃ結構前から噂になってたのに……ああ、でも榊原さんはそういう浮ついた話、一切興味なさそうだもんね」


「……まさか、すでにおったのか?」


「うん。学園の初日からいたわよ」


「では……すでにシナリオとやらは始まっておるのか」


「そうね。私の認識では始まってる。でも、最初の王妃様のお茶会で榊原さんが盤面をひっくり返したでしょ? で、今回の交流会と男装の麗人デビューよ」


「まあ、あの青二才(王太子)に気に入られようなどとは露ほども思っておらん。こちらから婚約辞退の打診をしておるというのに、王家からは未だ何の回答もないのだ」


「じゃあ、シナリオ通りに来るとしたら『イジメへの対応』ね。確か……注意を受ける、無視される、教科書を破られる、お茶会に呼ばれない、水をかけられる、階段から突き落とされる、果ては暴漢に襲わせる……そんなところかしら。この辺りはアリバイを作って固めておいて、味方の数が圧倒的になれば何の問題もないわ」


「アリバイ……?」


「あー、存在証明のことね。その時間に自分がどこで何をしていたか、証人や証拠を揃えておくことよ」


「なるほど、それは極めて重要であるな。日々の行動日誌でも細かくつけるとするか」


「まあ、アンジェリカ様には私や取り巻きの令嬢たちが四六時中ついてるし、学園でも外でもファンが常にあなたを目で追ってるわ。彼女たち全員が『絶対にやっていない』という最強の証人になるんだから、ファンサービスは邪険にしちゃダメよ?」


あの、女子特有の黄色い高揚感の中に己の身を置き続けねばならんのかと思うと、俺はげんなりと心が折れそうになった。だが――これもすべてはお役目を果たすため。気合を入れ直すしかない。


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


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AI利用状況設定については、設定にて「補助的利用(アイデア出し・資料調査・誤字脱字のスペルチェックなど、補助的な利用)」にチェックして投稿しています。

補助的利用については、「この設定は公開されません。※ただし、コンテストに参加されている場合や、商業化等で作品へのお問い合わせがあった場合など、関係する企業に伝達することがあります」

とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。

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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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