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強化倍率∞ ~最弱足軽、《道具超強化》だけで天下を獲った男~  作者: 伝説の男前
第一部 覚醒編

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第七話「隠れ里の攻防」

#### 一


隠れ里に戻った練たちを待っていたのは、緊迫した空気だった。


「鬼灯めが、この場所を蛇柳に売ったに違いない」


茅野が険しい顔で告げる。逃げ帰った鬼灯たちの一党から、隠れ里の位置が敵方に漏れるのは時間の問題だった。


「里の者たちを、また逃がさねばならぬのか……」


疲れ切った声で呟く茅野に、練は思わず声を上げていた。


「――待ってください。逃げてばかりじゃ、いつまで経っても、桜庭家は再興できません」


「では、どうしろと言うのだ。ろくな兵もおらぬこの里で、蛇柳の大軍を迎え撃てとでも」


「はい」


きっぱりと答えた練に、広間の空気が凍りついた。だが、練の目には、これまでにない強い光が宿っていた。


「堺で仕入れた鉄砲、まだ十丁近く残っています。それに、里にある竹や木材で、盾も作れます。全部、俺が強化します。だから――」


「だから、戦うと言うのか。この里の者たちの命を懸けて」


「逃げても、いずれ追いつかれます。それなら、ここで一度、確かな備えを作った方がいい」


震える声ではあったが、そこには揺るぎない意志があった。しばらくの沈黙のあと、明日香が静かに口を開いた。


「――練の言う通りだ。茅野、腹を括ろう。この里を、砦とする」


---


#### 二


その日から、里は慌ただしい戦支度に追われた。


練は寝る間も惜しんで、里にある道具という道具を一つずつ手に取り、理解を深めては強化していった。堺で学んだ知識、ゴンザから聞いた素材の目利き、里の古老たちから聞き出した土地の地形――あらゆる知識を吸収するほどに、練の力は着実に広がっていった。


竹束は、以前にも増して硬く仕上がった。柵は、内側に鉄芯を仕込んだように頑丈になった。何より、十丁の火縄銃は、それぞれが驚くほどの精度と装填速度を得ていた。


```

柵(土塁補強済み)

耐衝撃性能:×200


火縄銃(十丁)

装填速度:×60

命中精度:×130

```


「大したもんだ……」


矢玉を試し撃ちしたゴンザが、感嘆の声を漏らす。里の者たちも、次第に不安の色を薄れさせ、練の周りに集まってくるようになっていた。


「練殿、この(くわ)も、何かの役に立ちますかの」


「この鎌も、頼めますかの」


農具まで持ち込む者たちに、練は苦笑しながらも、一つ一つ丁寧に理解を深めていった。武器になりうるものだけでなく、防具の補強、井戸の補修、避難経路の整備――道具を通して、里全体の備えが着実に固まっていく。


「――其方、ずいぶんと頼もしくなったな」


夜、見回りに出た練に、明日香が声をかけてきた。


「まだまだです。本当に、これで守り切れるか……」


「不安なのは、皆同じだ。だが其方の姿を見て、里の者たちの目が変わった。それだけで、もう十分な備えになっておる」


その言葉に、練は少しだけ肩の力を抜くことができた。


---


#### 三


三日後の未明、物見の警鐘が鳴り響いた。


「敵襲だ! 蛇柳の軍勢、山を下ってくる!」


その数、およそ二百。隠れ里の兵力とは比べ物にならない大軍だった。だが、練の胸に、以前ほどの絶望的な恐怖はなかった。


「配置につけ! 練殿の言う通りに!」


茅野の号令一下、里の者たちが持ち場に散っていく。柵の内側に伏せた鉄砲隊、竹束を並べた前衛、そして後方には、避難の指揮を執る老人たちの姿があった。


「――来るぞ!」


先鋒の蛇柳勢が、雄叫びを上げながら柵に殺到する。だが、強化された柵は、槍の穂先も、投げつけられた石つぶても、ものともせず跳ね返した。


「な、なんだこの柵は……!」


動揺する敵兵に向け、練の合図で鉄砲隊が一斉に火を噴いた。


轟音とともに放たれた弾丸は、驚くべき精度で敵の隊列を切り裂いていく。装填速度が飛躍的に向上した銃は、次々と弾を撃ち出し、まるで何十丁もの銃が並んでいるかのような弾幕を作り出していた。


「怯むな! 数で押し潰せ!」


指揮官らしき武者が声を張り上げるが、突撃してくる兵の多くが、竹束の前で足止めを食らい、そこを狙い撃たれていく。練自身も、震える手で銃を構え続けていた。


---


#### 四


戦況が拮抗し始めた頃、敵陣の奥から、ひときわ豪奢な甲冑を纏った騎馬武者が進み出てきた。


「――哀れなものよな。烏合の衆が、付け焼き刃の備えで粋がりおって」


苦々しい声とともに現れたのは、蛇柳影虎配下の将、蛯名靭負(えびな ゆきえ)だった。数百の兵を率い、周辺の国衆を次々と屠ってきた歴戦の将である。


「あの銃も柵も、ただの小細工に過ぎぬ。者ども、あの陣を踏み潰せ!」


蛯名自らが采配を振るい、精鋭を率いて突撃を再開する。強化された守りをもってしても、数の差は如何ともし難く、柵の一部がついに崩され始めた。


「くっ……!」


崩れた柵の隙間から雪崩れ込む敵兵に、里の防衛線が乱れる。練は震えながらも、最後の力を振り絞り、手にした脇差を握りしめた。


――理解しろ。今この瞬間の、すべてを。


戦況、地形、里の者たちの想い、これまで積み重ねてきた知識のすべて。極限の集中の中で、練の中の理解度が、これまでにない速さで駆け上がっていった。


```

理解度:78% → 95%

強化完了

斬れ味:限界突破

```


震える足で前に出た練は、崩れた柵の隙間に立ちはだかった。恐怖はまだある。だが、それ以上に、守りたいものがあった。


「――ここは、通しません」


小さいが、はっきりとした声だった。踏み込んできた敵兵の槍を、練の脇差が一閃のもとに斬り払う。その一撃に気圧されたように、敵の勢いがわずかに止まった。


その隙を逃さず、明日香が小太刀を手に躍り出て、崩れかけた戦線を立て直していく。ゴンザや護衛の若侍たちも奮起し、里全体が一丸となって、敵の猛攻を押し返し始めた。


「馬鹿な……この烏合の衆が……!」


蛯名が驚愕の声を上げる中、戦況は少しずつ、しかし確実に、隠れ里の側へと傾き始めていた。


(第八話「決着、そして次なる道」へ続く)


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