公爵令嬢の話
エレーヌ・アルベルモは王太子の婚約者だった。
幼い頃に婚約関係を結び、王妃教育を受けてきた。
幼い頃は厳しい指導に泣き言を言いたい事もあったけれど将来の王妃として、更に両親の期待も背負い頑張った。
「その結果が浮気による解消なんてなんの冗談ですか?」
王家からの使者から伝えられエレーヌは笑顔を貼り付けたまま冷たい覇気を出していた。
「も、申し訳ありません……」
「貴方が謝っても意味はございませんし罪はありませんわ。 罪があるのは手紙1つで私の10年を終わらせようとしている王家ですわ」
「その通りだな、我が家を嘗めているとしか思えんし、今後の事を考えないといかんな」
「えぇ、王妃様からお茶会の招待をいただきましたが暫くはキャンセルしなくてはなりませんわね」
使者が顔面蒼白でガタガタと震えているのはエレーヌだけではなく公爵夫妻からの怒気が半端なかったからも理由のだろう。
そもそも、この婚約には公爵は後ろ向きだったのだ。
王家との縁なんて正直どうでもよかったのだが、ただ国王からどうしても、というお願いで結んだのだ。
その結果がコレである、しかも一方的な手紙一枚で謝罪の言葉もなし。
嘗めている、 と思っても仕方が無い話である。
「今後の事はお父様方にお任せしますわ」
「わかった、遠慮はしない。 責任は取ってもらおう」
「エレーヌの大事な10年間を駄目にしようとしているんだからそれなりのケジメは取ってもらいましょう」
そう言ってニッコリ笑う両親、王家は風前の灯火である。
自室に戻ってきたエレーヌはベッドにポスンとダイブして深く溜息を吐いた。
自分の10年を駄目にされたのは腹は立ったが解放感の方が強かった。
「そういえば……、王太子の浮気相手はレイナルド様と婚約されていた方、と書いてあったわね」
常に王太子の後ろに付いていた真面目な青年、それがエレーヌのレイナルドに対するイメージだった。
自分よりも傷ついているのはレイナルドの筈である。
「レイナルド様は大丈夫なのかしら……」
レイナルドが失踪し行方不明と知るのはそれから数日後の事である。




