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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
【瞳中の夢】

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146/151

【絢音】仄暗い追跡者と、鋼鉄の天使【瞳中の夢】

絢音が市街地の中心部へ進むにつれ、敵の密度は目に見えて増していった。


特に中層の崩壊住宅街では、【ガーゴイル】が建物の装飾に擬態して潜んでいる。

建物とほとんど変わらない色をしているため、気を抜くと簡単に見落としてしまう。

そして、プレイヤーが通り過ぎた瞬間を狙い、突然の奇襲を仕掛けてくるのだ。



何度も辛い思いをしたため、

絢音は常に周囲の景色に目を配り、潜んでいる敵がいないか観察する癖を身につけていた。


幸いにも、瞳はまだソウルライクの真髄を完全には会得していない。

少なくとも創始者ほどの“優しさ”はない。

ドアを開けるたびに、角や頭上を警戒する必要はなかった。


「がぁッ!」

柱の上で装飾に擬態していたガーゴイルが咆哮を上げ、星野光へと飛びかかる。



カンッ!

絢音はそれを見越して、パリィで弾き返した。


「もう見えてるって!」


そのまま反撃へと移る。


双剣が連続して閃く。


まるで優雅なワルツを踊るかのように。


ガーゴイルと、咆哮を聞いて襲いかかってきたクロウラーをまとめて打ち倒した。




ふと、絢音は路地裏に「それ」を見つけた。


以前はただの黒い影だったが、至近距離で見るとその異様さが際立つ。

灰色のクロウラーよりもさらに細長く、四肢は鋭利な刃物のような節肢。

その姿は、あまりにも巨大な蜘蛛を連想させた。



「ひっ……!?」


蜘蛛が苦手な絢音は、珍しく悲鳴を上げる。

その細長く、陰湿にこちらを伺うシルエット。


それは高校時代、彼女を天川社から卒業させる引き金となった、あの「細身の少年」の記憶を呼び起こした。

嫌悪とトラウマのダブルパンチに、絢音は露骨に眉をひそめる。


:悲鳴助かる

:あー、天敵きたこれ……

:動きがマジで不審者すぎる



「そうだ、手帳……」

絢音は急いで手帳を開き、情報を確認した。


【ダーク・ツイスター】

クロウラーの変異種。


刃のような四肢を持ち、極めて高い戦闘能力と執着心を持つ。

外来者を激しく憎悪し、常に陰から獲物を監視する。

湿った暗がりを好む。


「……紹介文がもう、ね」

絢音は引きつった笑いを浮かべた。


:ストーカーじゃん

:見た目からして陰湿そう


ツイスターは遠くの角から灰色の瞳でこちらをじっと見つめているが、

星野光を操作して近づくと、すぐに背を向けて逃げてしまう。


「また消えた……」


:逃げるなよ卑怯者!

:正面から来い!


周囲を見回しても、ツイスターの姿は見つからない。

仕方なく、絢音は探索を続けた。


爆発の時を待つ不発弾を抱えているような、嫌なプレッシャーを感じながら、

絢音は旧都の中心部に辿り着いた。




そこには、大きな広場があった。

かつての栄華を物語る彫像が無残に砕け散り、ガーゴイルの残骸が小山のように積み上がっていた。


その頂に、白いワンピースを着た金髮の少女が座っている。

彼女は黒猫を優しく撫でながら、空ろな声で歌を口ずさんでいた。



「……嘘、本当に天使になったの?」


どこか見覚えのある光景。

だが違うのは、少女の背に鋼鉄の翼が二対、生えていることだった。


どう見てもボス、それもステージボス級だ。



「多分勝てないけど……やってみる?」


絢音の指先が、好奇心に抗えずうずき出す。


:この先、地獄だぞ。

:死にに行く予感しかしないw


広場に足を踏み入れた瞬間、鋼の羽が矢のように地面を貫いた。


「……来ないで」

澄んだ声が、広場全体に響き渡る。


少女の足元にある無数の残骸を見て、絢音は無謀な挑戦を断念した。

「……今はまだ、勝てる気がしない。やめとこう」


絢音は広場の近くに帰郷の鈴を振って、新たなキャンプを設営した。


篝火に当たりながら一息ついていると、隣にいたリリが鋭く顔を上げた。




「ギィィィィアアアアッ!」


鋭い咆哮とともに、ツイスターが闇を裂いて突進してきた。



「やっと来た!」


不発弾が爆発したことに、むしろ安堵した絢音は双剣を抜いて応戦する。


ツイスターの攻撃は、カポエイラのように回転しながら刃の足で切り裂く変則的なものだ。


「四刀流とか卑怯でしょ!」


リリの援護射撃を受けつつ、パリィで隙を作って斬りつける。


だが、劣勢を察したのか、ツイスターは再び逃走した。


「また逃げられた……。あんなの、追いかけっこじゃ埒が明かないな」




「一定の体力まで減ると逃げるみたい。この開けた場所じゃ捕まえられないわね」

リリが冷静に分析する。


「逃げられない状況を作る必要があるわ」


「地形を利用するか、罠を張るか……ってこと?」


星野光が問い返す。


「あいつを逃がさないための『場所』が必要です。屋内なら、逃げ道は限られるはず」


少し考えてから、リリはそう結論づけた。


「近くを探してみてください。旧市街なら適した場所があるはずです」

こうして、新たな任務が提示された。





「お、ここ良さそう」


最終的に見つけたのは、劇場のような場所だった。


内部は一面、蒼白な灰色。

崩れた観客席は、まるで次の公演を待っているかのように静まり返っている。


木製の舞台の上にはガラス張りの天井があり、異様な光を落としていた。


出入口は一つ。

空間も十分。


条件としては申し分ない。


その瞬間、任務完了の表示が現れる。


「よし、リリちゃんに報告だね」


拠点に戻ると、リリは小さく頷いた。


「舞台か……確かに最適です」


【任務:決戦の地を探せ 達成】

【報酬:回復薬×30】


「えっ、一気にこんなにもらえるの!?」


絢音は驚きの声を上げた。



「私は後ろからついていきます。中に入った瞬間、退路を断ちます」


「リリちゃん、一緒に戦わないの?」


少し残念そうな絢音。


:2対1だと戦いにならないか

:ストーカーにフェアはいらない


チャットの流れを見て、絢音はふと高校時代を思い出す。


(あの時は、瞳が一人で全部片付けたんだよね。……あの日から、瞳は体を鍛え始めたんだっけ?)


自分を守るために強くなろうとした瞳の背中を思い出し、絢音の胸に甘い熱が走る。


すべての準備は整った。


絢音は決意を胸に、静まり返った劇場へと足を踏み入れた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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