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小学四年生に戻った俺の、あの頃からのやり直し  作者: HATENA 
第二章 四億円の使い道

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第三十七話 自分のパソコン

 土曜日、姉ちゃんは俺より先に父さんの部屋にいた。


「なんで先に座ってるんだよ」

「待ってたから」

「俺が見る話だっただろ」

「一緒に見るって言ったじゃん」


 姉ちゃんは椅子の背に手をかけたまま、動こうとしなかった。


 父さんが机の横から、もう一つ椅子を出す。


「二人とも座るなら、少し下がれ。近すぎる」


 姉ちゃんが椅子を少し引き、俺はその横に座った。


「宿題は終わったのか」

「終わった」

「私も終わったよ」

「姉ちゃんには聞いてない」

「私も使うんだから同じでしょ」


 父さんがパソコンの電源を入れた。


 画面がつくまで、姉ちゃんは机の上のマウスを触っている。


「まだ動かすなよ」

「触ってるだけ」

「それ、学校でも言ってるやついた」

「学校の話は知らない」


 父さんがインターネットにつなぐと、前に聞いた音が鳴った。


 姉ちゃんが少しだけ椅子を引く。


「何、この音」

「つながる時の音」

「知ってるの?」

「前にも聞いた」


 音が止まり、父さんが画面を開いた。


「アマ〇ンだったな」

「うん」


 父さんは名前を入れて、検索する。


 しばらくして結果が出た。ページの写真は上から順番にゆっくり出てくる。


「これ?」


 姉ちゃんが画面を指した。


「そう」

「本ばっかりじゃん」

「本を売ってるところだからな」

「漫画もある?」

「探せばあるんじゃないか」


 父さんが検索する場所を姉ちゃんに見せた。


「ここに本の名前を入れる」

「私がやっていい?」

「一回だけな」


 姉ちゃんはキーボードを見ながら、一文字ずつ入れていく。


 途中で違う字が入り、何度か消した。


「こういち、笑わないでよ」

「笑ってない」

「今、笑った」

「笑ってないって」


 やっと本の名前を入れ終わり、姉ちゃんが父さんを見る。


「これ押すの?」

「そうだ」


 検索結果が出ると、探していた本の表紙があった。


「あった」


 姉ちゃんが画面に顔を近づける。


「本屋にあるやつと同じ?」

「同じだろ」

「じゃあ本屋で買った方が早くない?」

「店にない本も買えるんじゃないか」


 父さんが値段の下を見ながら言った。


「家まで届けてくれるみたいだな」


 姉ちゃんは別の巻も開いた。


「今日は買わないぞ」

「分かってるよ」

「次、こういち」


 父さんに言われて、姉ちゃんが椅子を少しだけ横へずらした。


「何見るの?」

「会社のページ」

「また会社?」

「学校で見られなかったから」


 検索する欄に、アッ〇ル、と入れる。


 会社のページを開くと、色のついたパソコンの写真が大きく出た。


「これ、パソコン?」

「そう」

「青いのもある」

「ほんとだ」

「家にあるじゃん」

「自分のじゃないだろ」


 写真を一つ押すと、値段と細かい説明が出た。


 父さんが俺を見た。


「自分のが欲しいのか」


 自分の部屋に一台あれば、父さんの休みを待たなくても調べられる。


 一周目に一人で暮らしていた部屋では、使う時間も、いつやめるかも好きに決められた。横から画面をのぞかれ、代わるのを待たれることなんて、もうずいぶん久しぶりだった。


「中学になったら欲しい」


 姉ちゃんが先に振り向いた。


「中学になったら買うの?」

「まだ買うって決まってない」

「欲しいって言ったじゃん」

「欲しいとは言ったけど」


 父さんが椅子にもたれた。


「買って何に使うんだ」

「インターネットもしたいし、会社のことも自分で調べたい」

「ゲームは?」


 姉ちゃんが聞いた。


「ゲームもする」

「するんじゃん」

「それだけじゃないって」


 父さんは少し笑った。


「一台増やしても、今のままだと電話線は一つだぞ」

「同時には使えない?」

「使えないな」


 姉ちゃんがすぐに言った。


「じゃあ、こういちが使ってる時は電話できないの?」

「今と同じならな」

「それは困る」


 父さんが時計を見た。


「中学までまだ二年ある。まずは家のを自分で使えるようになってからだ」

「使えるようになったら買っていい?」

「その時にもう一度考える」

「考えるだけ?」

「置く場所も決めないといけないし、電話線のこともあるからな」


 部屋の入口から、母さんが顔を出した。


「電話、もう使っていい?」

「今切るところだ」


 父さんがインターネットを切った。


「もう終わり?」

「十分見ただろ」

「本、一冊しか見てない」

「別の巻も見てたじゃん」

「あれは同じ本」


 母さんは廊下へ戻りながら、姉ちゃんを見た。


「続きはまた今度にしなさい」

「はーい」


 姉ちゃんが椅子から立つ。


 俺も椅子から立とうとしたところで、父さんが言った。


「次は、つなぐところからやってみるか」

「うん」


 先に部屋を出た姉ちゃんが、廊下から戻ってきた。


「私もやる」

「姉ちゃんは本の名前を打つところからだろ」

「もう打てるし」

「二回間違えてたじゃん」

「次は間違えない」

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