↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ですが、聖女とだけ会話ができません  作者: ゲント・カイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/15

第六章 必要ない、の意味

 北部の町ガルダスには、魔王軍が使う転移門が隠されていた。


 門が完成すれば、魔王城から兵が直接送り込まれる。蓮たちは騎士団とともに、完成前の破壊へ向かった。


 廃砦の中庭に、黒い石柱が円を描いて並んでいる。魔族の兵が二十。中央では巨大な門が不気味な光を放っていた。


「あれを壊せばいいんですね」


「はい。しかし敵の術師が守っております」


 ロベルトが剣を抜く。


 蓮も聖剣を構えた。


 戦闘が始まる。


 クレールが前衛へ結界を張り、アウリの吹き矢が敵の術師を倒す。シポは石柱の配置を見ながら、魔力の流れを断てる場所を探していた。


 蓮は門の前へ進み、聖剣を振り下ろす。


 黒い衝撃が返ってきた。


 身体が宙へ浮き、石壁へ叩きつけられる。


「Ren!」


 クレールが駆け寄った。


 胸と背中が痛む。だが骨は折れていない。転移門が再び明滅し、敵の増援が現れようとしている。


 クレールが蓮の胸へ両手を当てた。


 今、治療を受けている時間はない。


 蓮はそう言いたかった。


「No! Claire!」


 クレールの手を押し返す。


「I don't need……」


 英単語を探す。


 治療はいらない。


 君の治療は、今はいらない。


「I don't need you!」


 クレールの動きが止まった。


「Go! Go!」


 蓮は転移門を指差した。クレールはゆっくり立ち上がり、前線へ戻った。


 戦いは続いた。


 シポが一本の石柱の根元を指す。アウリの吹き矢が、そこへ結びつけられた魔力線を切った。


 障壁が弱まる。


 蓮は聖剣を両手で握った。


「壊れろ!」


 金色の斬撃が転移門を両断する。


 黒い光が消え、残った魔族は退いた。


 勝利だった。


 だが、クレールは蓮を見なかった。


 負傷した騎士たちを淡々と治療し、蓮の番になると別の治癒術師を呼んだ。


「Claire」


「……」


 彼女は背を向けた。


 蓮には理由が分からなかった。


 夜、野営地でシポが蓮の隣へ座った。シポは自分を指し、次に蓮を指す。


「I don't need you」


 それから胸の前で大きな×を作り、遠くへ行けと手を振った。


「……え?」


 蓮はようやく、自分が口にした言葉の意味を考えた。


 俺は君を必要としていない。


 治療ではない。


 クレールそのものが必要ない、と言ってしまったのだ。


 少し離れた場所で、クレールは一人、火を見つめていた。


 蓮は立ち上がろうとした。


 だが、何と言えばいいのか分からない。


 必要ない、は簡単に言えた。


 その反対を、蓮はまだ英語で言えなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。