↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者ですが、聖女とだけ会話ができません  作者: ゲント・カイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/15

第二章 剣聖は剣を使えない

 翌日、四人にはそれぞれの称号にふさわしい装備が用意された。


 蓮の前には、金色の光を放つ聖剣が置かれた。


「勇者のみが扱える、王国の至宝でございます」


 騎士団長ロベルトが恭しく頭を下げる。


 蓮は聖剣を持ち上げた。驚くほど軽い。試しに振ってみると、机の端が斬れた。


「おお!」


 周囲から歓声が上がった。


「いや、今のは剣がすごいだけですよね?」


 蓮は剣道どころか、スポーツらしいスポーツもしてこなかった。振り方を知らない。構えも分からない。ただし聖剣は、持ち主の意思に応じて衝撃波まで放つらしい。


「まあ、当たれば何とかなるか……」


 次はクレールだった。


 彼女が両手を傷ついた兵士へ向けると、白い光が広がった。切り傷が見る間に塞がっていく。さらにクレールは傷口を洗うよう身振りで示し、包帯の巻き方まで直した。


「聖女様は、元の世界でも医療の心得がおありなのですな」


 大神官が感激している。


 クレールは治癒魔法だけに頼らず、患者の脈と呼吸を確かめていた。言葉が分からなくても、その手つきが確かなことは蓮にも分かった。


 シポには分厚い魔導書が渡された。


 彼は数ページめくり、すぐに閉じた。


「お気に召しませんか?」


 シポは窓を開け、空と風を確かめた。それから外へ出ると、城の井戸へ向かう。水をすくい、匂いを嗅ぎ、周囲に生える草を見た。


 そして王国の人々に何かを説明し始めた。


「三刻ほどで雨が降るそうです。また、この井戸には汚水が流れ込んでいる可能性が高い、と」


 通訳役の王女エレオノーラが蓮へ伝えた。


 半信半疑だった兵たちが井戸を調べると、地下の排水路に亀裂が見つかった。昼過ぎには、晴れていた空から本当に雨が降った。


「魔法ですか?」


 ロベルトが尋ねる。


 シポは首を横に振った。風と雲を見ただけらしい。


 最後に、アウリへ一振りの長剣が渡された。


 アウリは柄を握った。ぎこちなく一度振り、首を傾げる。そして剣を床へ置いた。


「剣聖様?」


 代わりに彼が取り出したのは、細長い筒だった。


 吹き矢。


 訓練場で試すことになった。


 王国一の魔術師が、三重の防御障壁を張る。その向こうには鉄の盾、さらに石壁がある。


 アウリは吹き矢を口に当てた。


 短く息を吹く。


 小さな矢は一枚目の障壁を抜き、二枚目を抜き、三枚目まで突き破った。鉄の盾へ穴を開け、背後の石壁に深く刺さった。


 訓練場が静まり返る。


 アウリは何事もなかったように筒を腰へ戻した。


 王国の重臣たちは長い協議に入った。


 勇者は剣術を知らない。


 賢者は魔導書を読まない。


 剣聖は剣を使えない。


 それでも、聖剣は岩を斬り、賢者は空と水を読み、吹き矢は王国最高の障壁を貫いた。


 最終的な政治判断は、実に柔軟だった。


 剣聖は剣を使わなくても剣聖である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。