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勇者ですが、聖女とだけ会話ができません  作者: ゲント・カイ


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第十三章 勇者と聖女の結婚式

 魔王討伐から一年後。


 王都の大聖堂に、かつてない人数が集まっていた。


「勇者様、ご結婚おめでとうございます!」


「聖女様!」


 蓮は緊張した顔で祭壇の前に立っていた。


「魔王のときより緊張するな……」


 隣のロベルトが笑う。


「逃げるなら今ですよ」


「縁起でもないこと言わないでください」


 扉が開いた。


 クレールが入ってくる。


 白い衣装。


 ヴェール。


 蓮は一瞬、本当に言葉を失った。


 英語力の問題ではない。


「Beautiful」


 それだけは自然に出た。


 クレールが笑う。


「Thank you」


 大神官が二人の前に立つ。


「それでは誓いを」


 蓮とクレールが向かい合う。


 大神官の言葉は、二人とも完璧に理解できる。


「健やかなるときも、病めるときも――」


 蓮はふと思った。


 妙な話だ。


 結婚式を執り行う大神官の言葉は完璧に分かる。


 参列している王族の言葉も、騎士の言葉も、町の人々の言葉も分かる。


 なのに、これから一生一緒に暮らす女性との会話だけは、自分たちで覚えなければならない。


「……まあ、いいか」


 蓮が小さく呟く。


「?」


 クレールが首を傾げる。


「何でもない」


 当然、分からない。


 蓮は英語へ直した。


「Nothing」


「Okay」


 誓いが終わる。


 大神官が笑った。


「では、誓いの口づけを」


 蓮の顔が赤くなった。


 クレールは楽しそうだった。


 参列席を見る。


 シポが腕を組んでいる。


 アウリが明らかに笑っている。


「お前ら後で覚えてろよ」


 もちろん通じない。


 クレールが蓮の頬へ手を添えた。


 そして二人は口づけた。


 大聖堂を歓声が満たした。



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