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ねえ、急患なんだけど

あらすじ

嫉妬の魔王にパン勝負を挑まれた

孤児院にお使いに行った

孤児院に頻繁に顔を出すようになった←今ここ

「パン…………パン…………」


 夜。

 私はリビングに腰かけて、ぼーっとしながらパンパンマンになっていた。


 おそらく、今回のパン選定会の主役は王女様で間違いないだろう。なら、王女様の味覚に合わせたパンを作るのが一番だとは思う。

 だけど、そこで問題。

 王女様の好みが、わからない……。


「ベア様、相変わらずですね………」


「あれは、大分キてるわね~。昔の私を思い出すわ~」


 周りが何か言っているけれど、今の私に返す余裕はない。

 だって、もう時間がない。


「ベア様、もう選考会は五日後に迫ってますよ……?」


「わかってる、わかってるんだ、リムル………」


 そう、わかってる。

 わかってるんだけど、もうどうしていいかわからない。


「そんなに悩むのなら、孤児院の子供たちに試食してもらえばいいんじゃないかしら~?」


「それだっ!」


 マーサの言葉に、私は膝裏で椅子を押し倒した。

 そうだよ、王女様は8歳だ。なら、孤児院の子供たちと年齢は大差ない。

 なら、きっと味覚も近しい物があるはず―――、まあ、王女様の舌と、孤児院の子供たちの舌とで、どのくらい肥えに差があるかはわからないけれど。

 それでも、きっと参考にはなるはずだ。

 残り五日。まずは今夜中に、子供たちが好きそうなパンを吟味しておくとしよう。


 ――――――――ドン、ドンっ!


 唐突に、裏手の扉が激しく叩かれる音が響き渡った。


「なんでしょうか、こんな時間に」


「ちょっと見てくるわね~」


 と言って、ぱたぱたと向かうマーサ。


「リムル、悪いけど見てきてくれる? マーサ一人だと危ないかもしれないから」


「それもそうですね。わかりました」


 リムルは私が言うと、マーサの後を追いかけていった。

 こんな時間に訪問とは、いったい誰だろうか。マドリアナだったら、きっと最初にここに来た時と同じように、黙って入ってくるだろうし。

 まあ、例え悪漢だったとしても、リムルがいれば問題ないだろう。なんたって、始祖の吸血鬼だし。

 多分、見た感じだと、魔王の次くらいの実力はあるのではなかろうか。あるいは誰かと入れ替わっていてもおかしくはなかっただろう。

 なんて思っていると、


「ベア様っ! 大変です!!」


「え?」


 リムルが大慌てでリビングに入ってきた。

 え、まさかリムルでも手に負えない相手が? マドリアナ?


「孤児院の子が! メアちゃんが!」


「―――――え、メア?」


 予想の斜め後方を行く名前が、リムルの口から飛び出てきた。

 メアと言えば、吸血鬼の女の子だ。私が孤児院で特に仲良くしている子でもある。


「魔孔病にかかって、倒れましたっ!」

「……………え?」


 魔孔病とは、少し前――――といっても30年くらい前――――に魔族の間で流行った病気の一つで魔力を放出するための機関に穴が開いてしまうという病だ。確かにメアはハーフとはいえ魔族だから、罹るリスクはあるだろう。

 でも、魔孔病は薬が見つかって以降、免疫でもできたのか、ほとんど罹る魔族はいなくなったはずなのだった。

 おそらく、ハーフと言う出自が関係しているとは思うのだけれど、今はそんなことはどうでもよくて。


 リムルの悲鳴ともいえる言葉を聞いて、私は、


「………………まじかぁ」


 軽く絶望した。

期間空いてすみません。ラブコメにうつつを抜かしております(

近々引っ越すこともあって頻度は減ると思いますが、投稿は続けるつもりです。


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