↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大剣の冒険者 〜不格好な刃が紡ぐ英雄譚〜  作者: beck2026
第1部 鉄の塊を背負う者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/111

第六十七章:還らぬ背中と残された掌

視界を覆っていた眩い光が弾け、次の瞬間、レイの身体は冷たい石畳の上へと激しく投げ出された。

 

「……っ、が……!」

 

全身を焼く強酸の激痛と、肉を削ぎ落とされた絶望的な疲労感が一気に押し寄せる。

咳き込むたびに血の塊が床を汚した。

薄れゆく意識の中で周囲を見渡すと、そこはギルムの冒険者ギルドの裏手、臨時の救護所として使われていた広場だった。

 

「レイッ!? お前、生きて……!」

 

悲痛な叫び声と共に駆け寄ってきたのは、泥と血にまみれたアレンだった。

その後ろからは、顔を涙でぐしゃぐしゃにしたシェリアが、レイの無惨な姿を見て言葉を失って立ち尽くしている。

奥のベッドでは、片腕を失ったボルグが神官たちの治療を受けながら、昏睡状態に陥っていた。

 

「アレン……さん……、シェリア、さん……」

 

レイはひしゃげた右手を伸ばそうとした。

しかし、その手には、あの鈍い銀色の大剣がない。

絶望の底で力を失い、奈落の床へと落としてきてしまったのだ。

 

「無茶しやがって……! よく一人で逃げ延びたな……!」

 

アレンが震える手でレイの身体を抱き起そうとする。

だが、レイはその言葉に首を振った。

 

「違う……僕じゃ、ない……」

 

レイの虚ろな瞳から、堰を切ったように血の混じった涙が溢れ出した。

 

「レオンさんが……僕の代わりに……水晶を……っ」

 

その名前が出た瞬間、アレンの動きが完全に止まった。

シェリアが両手で口を覆い、その場に崩れ落ちる。

 

「あんなに、ボロボロだったのに……僕なんかを庇って……闇の底に……!」

 

レイは血に濡れた己の掌を、狂ったように石畳へと叩きつけた。

何度も、何度も。

皮膚が裂け、骨が軋む音を立てても、止めることができなかった。

 

誰かの盾になる。そう誓って、あの大剣を背負ったはずだった。

圧倒的な質量があれば、どんな窮地も叩き潰せると信じていた。

しかし、現実はどうだ。

盾になるどころか、最も大切な仲間の腕を奪われ、一番憧れていた恩人の命を代償にして、自分だけがおめおめと生き残っている。

 

「あァァァァァァァァッ!!」

 

獣のような、悲痛な慟哭が夕暮れのギルムに響き渡る。

 

かつて英雄が遺した大剣は、今はもうない。

圧倒的な絶望を前に、少年が積み上げてきた自信と誇りは、レオンの命と共に完全にへし折られてしまったのだ。

残されたのは、何も護れなかった己の弱さと、一生消えることのない深い喪失感だけだった。

最後まで『大剣の冒険者』をお読みいただき、誠にありがとうございました。

己の弱さを呪い、恩人を失った絶望に泣き叫ぶレイ。彼からすべてを奪い去った残酷な現実を前に、物語は最も深く暗いどん底へと沈みました。

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

すべてを失ったレイが、この暗闇の中で再び立ち上がることができるのか。皆様からの応援が、次なる展開を描き続けるための最大の原動力となります。どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。