第五十六章:凱旋への路程
ルミナスの街を立ち、一行は一時の休息を取る間もなく、北西へと続く街道を急いでいた。
目指すは、若き大剣使いレイの始まりの地であり、今まさに危機に瀕しているという街・ギルム。
数日前まで緑に囲まれたルミナスの景色に馴染んでいた彼らの目の前には、徐々に、かつて見慣れた荒涼とした岩肌の山々が姿を現し始めていた。
「ここを越えれば、ギルムの領地に入るな。
それにしても、風の匂いが少しばかり生臭くなってきやがった」
先頭を歩くボルグが、新調したばかりの巨大な盾の感触を確かめながら、不快そうに鼻を鳴らした。
その言葉通り、乾いた風の中には、魔物の吐息や焦げた大地の匂いが微かに混ざり合っている。
「……行商人の噂は本当のようね。
魔力(MP)の波形が、この先で激しく乱れているのを感じます。通常ではあり得ない密度の魔物が、一箇所に集まっている証拠よ」
シェリアは歩調を崩さず、背中の魔導銃にそっと手を添えながら、琥珀色の瞳を鋭く尖らせた。
純白の原石によって生まれ変わった彼女の相棒は、主の緊張を察知したかのように、精緻な紋様から淡い青い光をまたたかせている。
「レイ、調子はどうだ?」
隣を歩くアレンが、気遣うように声をかけてきた。
「……大丈夫です。ただ、少しだけ不思議な感覚なんです」
レイは背中にある武骨な大剣の柄を握りしめ、かつて自分が飛び出した街の方角を見据えた。
「ほんの少し前まで、僕はあの街で、ただ重いだけの鉄魂を振り回して、一人で強くなろうともがいていました。
それが今、こうして信じ合える仲間と一緒に、あの街を護るために戻ろうとしている」
手のひらのマメは硬く、体幹の芯は微塵もブレない。
ルミナスの濃霧、砂塵の荒野、そして古の遺跡――過酷な環境を戦い抜く中で得た『質量の真髄』が、レイの肉体に絶対的な自信を与えていた。
「弱気になる必要なんてないさ。今のあんたは、あの頃の未熟者じゃない」
アレンはふっと不敵に笑い、前方の街道の先を指さした。
「ルミナスの街でその名を轟かせた大剣使いの実力、ギルムの連中にたっぷりと拝ませてやろうじゃないか」
「はい!」
レイは力強く頷き、一歩の踏み込みをさらに深くした。
かつて泥をすすり、挫折に涙した始まりの地。
大きく成長した新星の大剣使いと、背中を預け合う最高の仲間たちは、迫り来る不穏な影を切り裂くため、ギルムの防衛線へと向かって一気に加速していった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ついにギルムの地へと近づくレイたち。
変わってしまった故郷の有様と、そこで待ち受ける新たな脅威とは――。
これからの激闘の展開も、ぜひ応援していただけると嬉しいです!
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