第五十五章:束の間の休息と、忍び寄る影
激戦の翌朝、ルミナスの街は穏やかな陽光に包まれていた。
これまでの連戦による身体の強張りを取り除くため、レイは宿の裏手でいつもより時間をかけて入念にストレッチを行っていた。
大剣を握る手のひらのマメはすっかり硬くなり、皮膚は鋼のように強固に鍛え上げられている。
「おはよう、レイ。相変わらず感心なことね」
宿の勝手口から、亜麻色の髪をなびかせたシェリアが姿を現した。
その背中には、昨日完璧に修理された魔導銃が、朝日に映えて美しく収まっている。
彼女の表情からは完全に疲労が抜け、琥珀色の瞳は澄み切っていた。
「おはようございます、シェリアさん。銃の調子はどうですか?」
「ええ、最高よ。朝一番で魔力(MP)の同調を確認したけれど、以前の結晶とは比べ物にならないほど循環がスムーズだわ。これでいつでも全力であなたを援護できる」
シェリアは誇らしげに胸を張り、小さく微笑んだ。
その信頼に満ちた言葉に、レイも自然と笑みがこぼれる。
二人が食堂へ向かうと、そこにはすでにアレンとボルグがテーブルを囲んでいた。
ボルグは昨日の取り分で新調したという、一回り大きな大盾を丁寧に磨いており、アレンは地図を広げて何やら考え込んでいた。
「よう、二人とも。良い朝だな」
アレンが顔を上げ、二人を手招きする。
「アレンさん、何か新しい依頼でも探しているんですか?」
レイが席につきながら尋ねると、アレンは少しだけ真面目な顔になり、地図の一点を指さした。
「いや、少し気になる話を小耳に挟んでね。俺たちが遺跡に行っている間、ギルムの方角から来た行商人たちが、妙な噂を持ち込んできたんだ」
「ギルムの噂……ですか?」
かつて自分が生まれ育ち、そして飛び出した始まりの街の名に、レイの身体が僅かに緊張する。
「ああ。ギルムの周辺で、最近原因不明の『魔物の活性化』が起きているらしい。本来なら深部にいるはずの強力な魔物が、次々と麓まで下りてきているそうだ。あの街の冒険者ギルドだけじゃ、対応が後手に回っているらしくてな」
アレンの言葉に、ボルグが盾を磨く手を止め、重々しく首を振った。
「ギルムには、まだ実力不足の若い冒険者も多い。このままだと、街の防衛線が突破されるのも時間の問題だって話だ」
レイは静かに拳を握りしめた。
頭に浮かぶのは、自分が未熟だった頃に優しくしてくれたギルムの街の人々の顔や、共に汗を流した同世代の冒険者たちの姿だった。
今の自分には、あの頃とは違う、磨き上げた『質量』の真髄がある。
そして、背中を預け合える最高の仲間たちがいる。
「……アレンさん。僕、一度ギルムへ戻って、様子を見てきたいです」
レイが真っ直ぐな瞳で告げると、アレンはふっと不敵な笑みを浮かべ、広げていた地図を勢いよく畳んだ。
「言われるまでもないさ。仲間が生まれ育った街の危機を、見過ごすようなパーティーじゃないだろ? なぁ、ボルグ、シェリア」
「おうよ。俺の新しい大盾の頑丈さを、ギルムの化け物どもに試してやるには丁度いい」
「私も同行します、レイ。あなたの故郷を、今度は私の銃で護る手伝いをさせて」
三人の温かくも力強い言葉が、レイの胸の奥を熱く焦がしていく。
ルミナスの地で真の強さを手に入れた若き大剣使いは、新たな絆の力を携え、再び始まりの地・ギルムへと向かう決意を固めるのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
故郷ギルムの危機を知ったレイたちは、迷わず引き返すことを決意します。
大きく成長したレイの姿を、ギルムの人々はどう見るのか――。
これからの凱旋と次なる激闘の展開も、ぜひ応援していただけると嬉しいです!
「続きが気になる!」
「ギルムへの帰還、熱い!」
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それでは、また次回の更新でお会いしましょう!




