第五十四章:帰還、そして新たな予感
「静寂の古遺跡」を後にした一行がルミナスの東門へと辿り着く頃には、空はすっかり濃い紫色の夜幕に覆われていた。
門兵に軽く会釈をし、住み慣れた街の明かりの中に足を踏み入れる。
背後を歩くシェリアの背中には、純白の魔導結晶を宿した愛銃が、夜闇の中でも隠しきれないほどの微かな魔力の粒子を纏って佇んでいた。
「はあ、戻ってきたぜ。遺跡の石畳は足場としては最高だったが、やっぱり街の空気ってのは格別だな!」
ボルグが巨大な背負い袋の位置を直しながら、深く息を吐き出す。
その袋の中には、蠍の強固な甲殻や結晶の破片など、ギルドに持ち込めばそれなりの額になる素材がぎっしりと詰まっていた。
「そうね。でも、これでシェリアの銃も万全になったし、俺たちの連携も一段と磨きがかかった。今回の収穫は、金貨以上の価値があるぞ」
アレンが双剣の柄をポンと叩き、満足そうに微笑む。
「本当に、皆様には感謝の言葉もありません。このような心強い仲間と出会えたこと、私の旅の中で最大の幸運です」
シェリアは琥珀色の瞳を和ませ、一礼した。
その立ち姿からは、荒野で迷っていた頃の悲壮感は消え去り、一人の気高き銃士としての確かな風格が戻っていた。
「さあ、そうと決まればまずはギルドへの報告だ! その後はもちろん、昨日以上の宴が待ってるからな!」
アレンの合図で、一同は夜の活気に包まれる冒険者ギルドへと向かった。
窓口に蠍の素材を提出すると、受付の職員はまたしても目を丸くし、驚愕の表情で処理を進めていく。
ギルムから流れてきた新星の大剣使いと、異国の銃士。彼らの名前は、今やルミナスのギルド内で知らない者はいないほどになりつつあった。
手続きを終え、いつもの『琥珀の灯火亭』の扉を開ける。
溢れ返る熱気と、美味そうな肉の匂い、そして交わされる杯の音。
「レイ、本当にありがとうございました。あなたのあの『受け流し』がなければ、私は今頃どうなっていたか……」
席についたシェリアが、改めてレイの目を真っ直ぐに見つめて言った。
「いいえ、僕の方こそ。シェリアさんが確実に隙を突いてくれると信じていたから、あの一歩を踏み込めました。……僕たちは、良いパーティーですね」
レイは潰れた手のマメをそっと撫でながら、静かに、しかし確かな実感を込めて微笑んだ。
仲間を信じ、自らの質量を研ぎ澄ます。
その真髄を掴んだ少年は、もうかつての「ただ重いだけの鉄塊」を振り回していた頃の未熟者ではない。
新天地ルミナスでの絆を胸に、若き大剣使いの旅路は、まだ見ぬさらなる高みへと、力強く、どこまでも続いていくのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
これにて遺跡編、そしてシェリアの魔導銃復活の物語は一区切りとなります。
ルミナスの地で確実にその名を轟かせ始めたレイたちの旅を、これからも応援していただけると嬉しいです!
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