第五十一章:番人の大鎌
――凄まじい風切り音。
「碧晶の処刑蠍」の右の鋏が、横一文字にレイへと襲いかかる。
透明度の高い碧色の甲殻は、見た目の美しさからは想像もつかないほどの重量と、岩盤をも容易に切り裂く鋭利さを備えていた。
(真っ向から受け止めたら、大剣ごと弾かれる……!)
レイは石畳を鋭く踏みしめた。
しかし、後ろへ退がるのではない。
むしろ蠍の懐へと滑り込むように、斜め前方へと一歩を踏み出す。
頭のてっぺんから爪先まで、完全に一本の強固な芯を通す。
レイは迫り来る巨大な鋏の軌道に対し、大剣の刃を斜め四十五度の角度で「置きにいった」。
――ギチチチチチチッ!!!
火花が激しく飛び散り、耳を圧する金属摩擦音が地下空洞に響き渡る。
完璧な角度で配置されたレイの大剣は、蠍の圧倒的な怪力を受け止めるのではなく、その進行方向を上空へと滑らせるように「受け流した」のだ。
軌道を逸らされた蠍の右腕が、虚空を大きく薙ぐ。
完全にバランスを崩し、魔物の頑強な胴体が無防備に晒された。
「ボルグさん!」
「おおおっ、もらったぁ!」
連動するように左側からボルグが突進し、残されたもう一方の鋏を大盾で力任せに殴りつける。
ガァン、と重々しい衝撃音が響き、処刑蠍の巨躯が完全にその場に縫い留められた。
「シェリアさん、今です!」
レイが大剣を構え直しながら叫ぶ。
後方では、シェリアがすでに魔導銃の照準を、蠍の頭部にある小さな複眼の隙間へと完全に固定していた。
「――貫きなさい!」
シェリアの魔力(MP)が、限界に近い銃身の結晶へと一気に流れ込む。
――ズゥゥンッ!!!
地下空洞の空気を震わせ、一条の青白い光条が放たれた。
弾丸は寸分の狂いもなく、処刑蠍の装甲の継ぎ目、その最も脆い一点へと吸い込まれていく。
完璧な受け流しが生んだ、最大の勝機。
絆の刃と魔導の弾丸が、古の遺跡に巣食う番人の肉体を、確実に追い詰め始めていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
レイの見事な受け流しと、シェリアの精密射撃が完璧に噛み合いました。
しかし、番人の底力はまだこんなものではありません。
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