第五十章:最深部の光芒
螺旋状の石階段を下りきった先には、それまでの狭い通路からは想像もつかないほどの、広大な地下空洞が広がっていた。
ドーム状になった天井を見上げれば、無数の結晶が逆氷柱のように群生し、それ自体が淡い極光のような青い光を放っている。
その光に照らされた空間の最奥――そこには、ひときわ巨大で、一切の不純物を含まない純白の結晶が、静かに鎮座していた。
「……間違いないわ。あれが、私の探していた『魔導結晶の原石』です」
シェリアが息を呑み、琥珀色の瞳を輝かせる。
彼女の胸元で、魔導インジケーターがかつてないほどの強い光を放ち、共鳴するように微かに震えていた。
しかし、その美しさに目を奪われていた一同の前に、冷酷な現実が立ち塞がる。
巨大な原石の根元。
その影から、ゆっくりと鎌首をもたげるようにして、巨大な影が這い出してきた。
それは、全身が透明度の高い純碧色の甲殻で覆われた、体長五メートルを超える巨大な蠍――「碧晶の処刑蠍」だった。
その両腕にある大鎌のような鋏は、触れるものすべてを両断せんばかりに研ぎ澄まされ、背後で揺れる尾の針には、結晶化した致死の猛毒が不気味に脈打っている。
「……やっぱり、タダじゃあ持って行かせてくれないみたいね」
アレンが双剣を抜き放ち、鋭い視線を蠍の巨躯へと向けた。
ボルグも大盾を深く構え、石畳を強く踏みしめる。
『――キシィィィィィィッ!!!』
処刑蠍が、鼓膜を劈くような金属音の鳴き声を上げ、その巨体に似合わぬ俊敏さで突進を開始した。
その一歩ごとに、頑強な石畳に無数の亀裂が走り、結晶の破片が激しく弾け飛ぶ。
「レイ、右の鋏を受け流せ! ボルグ、左を頼む!
シェリアは後ろから、奴の関節の隙間を狙い撃て!」
アレンの鋭い大声が、広大な地下空洞に響き渡った。
「はいっ!」
レイは背中の大剣を流れるような動作で引き抜き、正眼に構えた。
足元はびくともしない。ここなら、己の持つ質量のすべてを、一点の曇りもなく刃に乗せることができる。
シェリアの銃を直し、このパーティーの「次なる道」を切り拓くため。
若き大剣使いは、薄闇の最深部で怪しく輝く、古の番人めがけて真っ直ぐに一歩を踏み出した。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ついに遺跡の最深部へと到達し、目的の原石と、それを守る強大な魔物「碧晶の処刑蠍」が姿を現しました。
大剣の質量、魔導銃の精密射撃、そしてアレンたちの連携が試される総力戦が始まります。
これからの激闘も、ぜひ応援していただけると嬉しいです!
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