第五章:小さな報酬と、新たな影
「おいおい、本当にあの鉄クズで仕留めてきたのかい」
夕暮れ時のギルド。
受付の職員は、レイが差し出した大ネズミの討伐証明部位を見つめ、驚きに目を見張っていた。
レイの手は細かく震えており、服は泥と魔物の返り血で汚れている。
お世辞にも余裕の勝利とは言えなかったが、確かに彼はやり遂げたのだ。
「……はい。なんとか、倒せました」
「大した根性だ。ほら、これが今回の報酬だよ」
カウンターに置かれたのは、数枚の銅貨。
決して多くはない、今日を生き延びるのが精一杯の小さな報酬。
それでも、自分の力で――この大剣と共に稼いだ最初の価値に、レイの胸は熱くなった。
銅貨を一枚ずつ、大切に懐へと収める。
「ありがと――」
礼を言いかけた、その時だった。
背後から、いくつかの足音が近づいてくる。
それは昼間にすれ違った、あの細剣を佩いた男とその取り巻きたちだった。
男はレイの前に立ち止まると、その足元に転がっている大剣を、蔑むような視線で見下ろした。
「ふん、ネズミ一匹にそこまで消耗しているとはな。
やはりその武器は、お前のような弱者にはただの重荷でしかない」
「……あなたには、関係ないはずです」
レイは痛む身体を奮い立たせ、男の視線を真っ向から受け止めた。
男は不愉快そうに眉をひそめ、ふっと冷酷な笑みを浮かべる。
「関係はあるさ。ギルムの街の品格に関わる。
いいか、新入り。明日はこの街の周辺に、少し厄介な魔物の群れが出没するという噂がある。
そんな木偶の坊を背負ったままでは、明日には生きていないと思え」
男はそれだけ言うと、今度こそギルドの奥へと去っていった。
「……厄介な、魔物の群れ?」
レイは男の去り際の言葉を反芻し、再び大剣の柄を固く握りしめた。
恐怖はある。だが、引くつもりは毛頭なかった。




