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大剣の冒険者  作者: beck2026


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第四章:不格好な一撃

「――あ」

 

視界が、跳躍した大ネズミの姿で埋まる。

 

目の前に迫る鋭い牙。

 

引き抜くだけで精一杯だった大剣は、まだ完全に構えきれていない。

 

受け流すことも、避けることも間に合わない。

 

(死ぬ――!?)

 

心臓が跳ね上がり、全身の血が逆流するような感覚の中、レイの身体が本能的に動いた。

 

まともな剣技ではない。

 

ただ、大剣の重みに振り回されるようにして、身体ごと前方へ倒れ込んだのだ。

 

「おおおおおっ!」

 

無様な叫び声と共に、半ば自重で落下させた鉄の塊。

 

大剣の平――刃ではなく、分厚い鉄の側面が、空中で大ネズミの胴体をまともに捉えた。

 

――ドガッ!!

 

鈍い破壊音が響き渡る。

 

大剣の圧倒的な重量は、ただそれだけで凄まじい衝撃を生み出していた。

 

大ネズミは悲鳴を上げる余裕すらなく、横一文字に吹き飛び、路地の石壁に激突して動かなくなった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ」

 

静まり返った路地で、レイは地面に両膝をついた。

 

大剣の柄を握る両手は、衝撃で激しく痺れ、自分の意志では開かない。

 

全身から冷や汗が噴き出し、心臓が耳の奥でうるさいほどに脈打っている。

 

「倒し、た……?」

 

動かなくなった魔物を見つめ、レイは震える手でようやく大剣を杖代わりに立ち上がった。

 

技もなければ、狙いも定まっていない、あまりにも不格好な一撃。

 

しかし、確かにその「重み」だけで、敵を圧殺した。

 

「これが、大剣の……力……」

 

痺れる手のひらで見つめる、鈍い銀色の刃。

 

恐怖の後にやってきたのは、得体の知れない高揚感だった。

 

この鉄塊を完全に自分のものにできたなら、どんな景色が見えるのだろうか。

 

レイは痛む身体を引きずりながら、最初の手応えを噛み締めるように、大ネズミの死体を回収し始めた。

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