第三章:最初の依頼(クエスト)
ギルドの重い木製の扉を押し開けると、中はさらに強烈な熱気に満ちていた。
酒と汗、そして金属が擦れ合う特有の臭い。
大勢の冒険者たちが、掲示板に張り出された羊皮紙を血眼になって睨みつけている。
レイは壁際に沿って歩き、ようやくの思いで受付へとたどり着いた。
背中の大剣がカウンターに軽く当たり、ごとり、と重苦しい音を立てる。
「……あの、新人の登録と、依頼を受けたいんですが」
受付にいた年配の職員は、レイの顔と、その背中の大剣を交互に見つめ、深くため息をついた。
「おいおい、本気かい?
その体でその得物は、自殺志願者と言っているようなものだぞ」
「分かっています。でも、これでやりたいんです」
レイの視線はまっすぐだった。
その瞳の奥にある譲れない光を見て、職員はそれ以上引き止めるのを諦めたらしい。
「……分かったよ。規約だから止めはしない。
だが、新人が最初に受けられるのは、街の裏手にある薬草園の害獣駆除だけだ。
現れるのはせいぜい、大ネズミくらいなものだが……油断するなよ」
渡された一枚の羊皮紙。
そこには、レイの冒険者としての第一歩となる依頼が記されていた。
「ありがとうございます」
レイは依頼書を大事に懐にしまい、ギルドを後にした。
街の裏手へと続く、日の当たらない薄暗い路地。
薬草園へと近づくにつれ、人の気配は消え、代わりに奇妙な獣の鳴き声が響き始める。
ガサリ、と前方の茂みが大きく揺れた。
薄暗闇の中から姿を現したのは、子供の背丈ほどもある、巨大な牙を持った大ネズミだ。
「――来た」
レイはごくりと息を呑み、背中から大剣を引き抜こうとする。
しかし、そのあまりの重量に、腕の筋肉が悲鳴を上げた。
「くっ、上がれ……っ!」
地面に刃先をこすりつけながら、なんとか大剣を構えたときには、すでに大ネズミがその鋭い牙を剥き出しにして、こちらへと跳躍していた。




