第二章:街の洗礼と、交わる視線
城壁の門をくぐると、そこは熱気と怒号が渦巻く別世界だった。
新興都市ギルム。
行き交う人々の中には、きらびやかな鎧に身を包んだ者や、怪しげなローブを纏った者が大勢いる。
その誰もが、一目で一癖も二癖もあると分かる曲者ばかりだ。
そんな混沌とした雑踏の中で、レイの姿は嫌でも目立っていた。
線が細く、お世辞にも強そうには見えない少年。
それなのに、背中には不釣り合いなほどに巨大な大剣を背負っている。
「おいおい、見ろよあれ……」
「おい、坊主! そんなデカい鉄クズ、引きずって歩くのが精一杯か?」
すれ違う冒険者たちが、遠慮のない嘲笑を投げかけてくる。
無理もない。
大剣の重さに耐えかねて、レイの足取りはフラフラで、膝は今にも笑い出しそうだったからだ。
レイは周囲の視線を避けるように、うつむき加減で歩みを進めた。
反論する余裕などない。
ただ一歩、前に足を出すことだけに、全神経を注いでいた。
目指すのは、街道の突き当たりに見える、大きな剣の看板――冒険者ギルドだ。
「ふん……身の程知らずが」
不意に、すぐ横から低く、冷ややかな声が聞こえた。
レイが思わず顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。
仕立ての良い軽鎧を身に付け、腰には鋭利な細剣を佩いている。
その男の鋭い視線は、レイを通り抜けて、その背中の大剣に向けられていた。
「武器に振り回されているようでは、戦場ではただの肉塊だ。
死にたくなければ、今すぐその玩具を捨てることだな」
男はそれだけ言い残すと、取り巻きを連れてギルドの中へと消えていった。
言い返す言葉は、見つからなかった。
男の言うことは、痛いほど正論だったからだ。
「……捨てられる、わけないだろ」
レイは小さく呟き、拳を固く握りしめた。
手のひらに、まだ見ぬ戦いへの恐怖と、それを上回る意地が滲む。
冷たい洗礼を受けながらも、レイはゆっくりとギルドの重い扉に手をかけた。




