第四十七章:薄闇の遺跡、その扉
ルミナスの街を立ち、数日の行程。
一行が辿り着いたのは、鬱蒼とした原生林の奥深くにひっそりと佇む、「静寂の古遺跡」だった。
長年の歳月によって苔に覆われた灰色の石造りの建造物は、周囲の木々に飲み込まれるようにして沈黙している。
入り口となる崩れかけた石門からは、ひんやりとした地下の空気が、かすかな魔力の残滓とともに吹き抜けていた。
「ここが、質の良い魔導結晶が眠るという遺跡か……。
確かに、ただの廃墟にしちゃあ、妙に空気の肌触りがピリピリしてやがるな」
ボルグが大盾の重みを確かめるように位置を調整し、低く呟いた。
アレンもまた、いつでも抜き放てるように双剣の柄に指をかけ、鋭い視線を遺跡の奥へと向けている。
「シェリア、魔導結晶の反応はありますか?」
レイの問いかけに、シェリアは愛用の魔導銃の側面に組み込まれた、小さな魔導インジケーターを覗き込んだ。
そこには、かすかに淡い青色の光が点滅している。
「はい。微弱ですが、地下の深部から確かに高純度の魔力(MP)の波動を感じます。……ただ、アレンさんの言う通り、結晶の魔力に引き寄せられた魔物の気配も、同時に複数感知しています。皆さん、気をつけてください」
シェリアは魔導銃を両手でしっかりと保持し、琥珀色の瞳を引き締めた。
砂塵の荒野で味わった、足場が流れる最悪の環境とは違い、ここの床は頑強な石畳だ。
射手としての本来の精密な立ち回りが期待できる反面、遺跡の内部は視界が狭く、不意の奇襲を受けやすい。
「よし、陣形はいつも通りだ。ボルグが前を張り、レイが中央で遊撃、シェリアは俺と後方を警戒しつつ、狙撃のチャンスを伺ってくれ。いくぞ」
アレンの合図とともに、一同は静かに石門を潜り、薄暗い通路へと足を踏み入れた。
壁面に埋め込まれた古の魔導灯が、侵入者に反応してか、チカチカと鈍い燐光を放ち始める。
一歩進むたびに、レイの靴底が硬い石畳を叩く音が響く。
流砂の荒野とは違う、びくともしない大地の感触。
レイは背中の大剣の柄にそっと触れ、全身の軸を一本に整えた。
――カツン。
不意に、通路の先にある暗闇から、硬い爪が石を引っ掻くような、不快な音が響いた。
「……来ます!」
シェリアの鋭い警告と同時に、暗闇の奥から、青白く光る瞳がいくつも浮かび上がってきた。
古の結晶を護るように巣食う、遺跡の魔物たち。
新星の大剣使いと、再起をかける銃士の、新たな連携の幕が今、切って落とされようとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ついに「静寂の古遺跡」へと足を踏み入れた一行。
石畳という強固な足場を得たレイの大剣と、シェリアの魔導銃が、いよいよ真の連携を見せる時が来ました。
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