第四十六章:琥珀の灯火亭、再び
ルミナスの街へと帰還した一同は、その足でなじみの酒場『琥珀の灯火亭』へと流れ込んでいた。
覇竜討伐の報は、ギルドの窓口を通じてまたたく間に酒場へと広がり、周囲の冒険者たちからは驚愕と称賛の混じった視線がひっきりなしに送られてくる。
「おいおい、本当にあの『砂塵の覇竜』を仕留めてきたのかよ……!」
「しかも、新入りの魔導銃士も一緒だって?」
そんな喧騒の中心にある大きな丸テーブルで、アレンが豪快にエールの樽を叩いた。
「さあ、お前ら! 荒野の覇王を倒した最高の勝利と、我がパーティーの新たな希望――シェリアの加入に、乾杯だ!」
「「乾杯!!」」
アレンとボルグの突き出した木樽に、レイと、少し戸惑い気味のシェリアが小さくグラスを合わせた。
カラン、と心地よい音が響き、宴が幕を開ける。
シェリアは差し出された、ルミナス名物の果実酒を恐る恐る口に運んだ。
爽やかな甘みが喉を潤すと、彼女の張り詰めていた端正な顔立ちが、ようやくふわりと緩んだ。
「美味しい……。こんなに落ち着いてお酒を飲んだのは、いつ以来でしょうか」
「だろ? ここの飯と酒はルミナス一だからな。さあ、遠慮せずにどんどん食ってくれ、ボルグの財布は今日、死ぬほど潤ってるからよ!」
アレンの言葉通り、ボルグは山盛りの串焼き肉を器用にシェリアとレイの皿へと取り分けていく。
「シェリア、さっきギルドで聞いたんだがな。お前さんが探している『探し物』ってのは、一体何なんだ? 差し支えなければ、俺たちにも手伝わせてほしいんだが」
ボルグが肉を頬張りながら、温厚な目をシェリアに向けた。
シェリアはグラスをそっと机に置くと、自身の足元に立てかけてある魔導銃に、慈しむような視線を落とした。
「私の探しているものは……『魔導結晶の原石』です」
「魔導結晶?」
レイが問いかけると、シェリアは静かに頷いた。
「はい。私のこの銃は、使う人間の魔力(MP)を原石に通すことで、強力な弾丸へと変換して放つ構造になっています。ですが、長旅の無理が祟って、今使っている結晶にヒビが入ってしまって……。このままでは、近いうちに弾丸を生成できなくなってしまいます」
シェリアは琥珀色の瞳に、強い決意の光を宿らせた。
「ルミナスの周辺には、非常に質の良い結晶が眠る古い遺跡があると聞き、国境を越えてやってきました。ですが、そこは今、強力な魔物の巣窟になっているらしくて……」
彼女の話を聞き、アレンとボルグは顔を見合わせた。そして、同時に不敵な笑みを浮かべる。
「なんだ、そんなことか! ちょうどいいじゃないか」
アレンがエールを飲み干し、レイの肩を組んだ。
「魔物の巣窟なら、俺たちの出番だ。な、レイ? 覇竜を叩き潰したお前の大剣があれば、どんな遺跡の化け物だって敵じゃない」
「はい。シェリアさんの銃を直すためなら、喜んでついていきます」
レイは真っ直ぐにシェリアを見つめ、力強く頷いた。
大剣の重さを支えてくれた仲間たちのために、今度は自分がその盾となり、矛となる。
「……皆様……」
シェリアの胸の奥に、砂塵の荒野では決して感じられなかった、温かな火が灯っていく。
孤独な旅路は終わりを告げ、新たな絆とともに、若き大剣使いと銃士の物語は、未知なる古の遺跡へと紡がれようとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
シェリアの目的が明らかになり、パーティーの次なる目的地は「古の遺跡」へと決まりました。
大剣の質量と魔導銃の精密射撃が、遺跡の魔物を相手にどんな戦いを見せるのか。
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