第四十四章:交錯する技術
シェリアの体調が落ち着くのを待ち、一同はルミナスの街へと引き返すことにした。
覇竜の素材の一部をボルグが巨大な背負い袋に詰め込み、レイを先頭に赤茶色の荒野を歩む。
「……不思議です」
並んで歩くシェリアが、レイの背中にある大剣をじっと見つめながら、ぽつりと呟いた。
その腕には、しっかりと愛用の魔導銃が抱えられている。
「何がですか?」
「その大剣です。この砂地では、足を一歩踏み出すだけでも重心が崩れるはず。それなのに、あなたの歩幅はさっきから一定ですし、軸が全くブレていません」
シェリアの指摘は、非常に的確だった。
彼女自身、銃という「精密機械」を扱うからこそ、人間の身体のわずかなブレや、環境による影響に敏感なのだろう。
「最初は僕も、砂に足を取られて全然ダメだったんです。でも、無理に砂に抗うのをやめて、沈むなら沈むなりに、大剣の重さと自分の重心を合わせるようにしたら、感覚が分かってきて」
レイが自身の経験をそのまま伝えると、シェリアは琥珀色の瞳を丸くし、それから深く感心したように頷いた。
「なるほど……流動する地面そのものを、自分の質量の一部として組み込んだのですね。単なる腕力ではなく、凄まじい体幹の制御です。……私の国には、そこまで泥臭く、かつ精密に武器を扱える前衛はいませんでした」
「シェリアさんの国って、どんなところなんですか?」
「ルミナスの遥か北にある、魔導工学の国です。私のこの銃も、魔力(MP)を充填して弾丸として放つ、最先端の兵器なのですが……」
シェリアは少しだけ寂しそうに微笑み、銃の引き金に指を添えた。
「どんなに優れた武器でも、扱う人間の足元が揺らいでしまっては、百発百中の照準も意味をなしません。私は、自分の技術に過信していたのだと思います」
彼女の言葉には、一度挫折を味わった者だけが持つ、気高き謙虚さがあった。
ただ守られるだけの存在ではない。自らの弱点を見つめ、次なる一手を模索するプロの目だ。
「だったらさ、シェリア」
前を歩いていたアレンが、楽しげに振り返った。
「ルミナスに着いたら、しばらく俺たちのパーティーに Ainori(相乗り)していかないか?
お前さんのその銃の威力と、レイの絶対にブレない大剣。この二つが噛み合ったら、どんな魔物もイチコロだと思うんだよね」
アレンの提案に、シェリアは驚いたように目を見張った。
それから、隣を歩くレイの横顔をじっと見つめる。
レイはただ、いつでも彼女の盾になれるよう、無骨な大剣の柄にそっと手を添え、静かに微笑んでいた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
レイの大剣と、シェリアの魔導銃。
異なる二つの技術が交わることで、ここからさらに戦術の幅が広がっていきます。
これからの二人の関係や成長を、ぜひ見守っていただけると嬉しいです!
「続きが気になる!」
「二人の連携が見てみたい!」
と思ってくださったら、
下にある【ブックマーク追加】や、
評価の【☆☆☆☆☆】をポチッと押し、
応援していただけると、執筆の凄まじい励みになります!
それでは、また次回の更新でお会いしましょう!




