第三十九章:荒野を統べる影
「岩甲の砂蜥蜴」が崩れ落ちたことで、静寂が戻るはずの荒野。
しかし、吹き抜ける砂風に乗って押し寄せてくる不気味な圧迫感に、アレンとボルグの表情が瞬時に凍りついた。
「おい、嘘だろ……。この気配、まさか……」
アレンの声が微かに震えている。
ボルグもまた、大盾を構え直すその手に、今までにないほどの緊張を漲らせていた。
前方の砂煙が、まるで巨大な渦を巻くように激しく弾け飛ぶ。
そこから姿を現したのは、先ほどの砂蜥蜴とは比較にならないほどの神々しさと、圧倒的な凶暴性を放つ巨躯だった。
全身を炎のように赤い、結晶化した鱗で包んだ巨大な亜竜――「砂塵の覇竜」。
本来ならこの荒野の最深部、国境の遥か向こう側に君臨しているはずの、生態系の頂点に位置する存在。
それが、縄張り争いの果てにここまで流れてきたというのか。
『――グルァァァァァァッ!!!』
覇竜が天を仰ぎ、咆哮を轟かせる。
大地を激しく揺さぶる音波の衝撃だけで、周囲の砂が一斉に跳ね上がり、レイたちの身体を押し戻そうとする。
「アレンさん、ボルグさん! 下がってください!」
レイは砂に足を埋めながらも、大剣を正眼に構え、大声を張り上げた。
この圧倒的な存在感、そして肌を刺すような純粋な殺気。
それは、ギルムの廃鉱山で出会った、あの轟雷の牙をも彷彿とさせるものだった。
今の自分たちの実力で勝てる相手ではないかもしれない。本能が、一刻も早い撤退を叫んでいる。
しかし、覇竜の燃え盛るような紅い瞳は、すでに彼らを確実に「獲物」としてロックしていた。
逃げれば、背後から一瞬で踏み潰される。ならば、やるべきことは一つだけだ。
レイは深く息を吸い込み、全身の力を抜きした。
流れる砂の感覚。大剣のずしりとした重み。
己の肉体を一本の強固な芯とし、迫り来る未知の脅威をまっすぐに見据える。
「アレンさん、隙を作ります。……僕の一撃に、合わせてください!」
「……チッ、分かったよ! 命、預けたぜ大剣使い!」
アレンが双剣を逆手に持ち替え、砂嵐の中へと駆け出す。
少年が背負う鉄塊が、荒野を統べる覇王の影を前に、かつてないほどの鋭い闘志を帯びて輝き始めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
レイの大剣使いとしての旅、およびアレンたちとの熱い共闘を
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