第三十一章:気高き挑戦者
アレンたちのパーティーと正式に手を組んでから、数日が過ぎた。
ルミナスの冒険者ギルド裏にある訓練場。
早朝の冷たい空気が満ちるその場所に、大剣を静かに構えるレイの姿があった。
その向かい側に立つのは、双剣を抜き放ち、鋭い視線を投げかけてくるアレンだ。
「いくぞ、レイ! 昨日の鎌虫よりも、俺の剣は速いぜ!」
「はい、いつでもどうぞ!」
アレンの身体が、爆発的な踏み込みと共に前方へと躍り出た。
左右の双剣が、まるで生き物のようにうねりながら、レイの左右の肩口へと同時に襲いかかる。
ルミナスの流麗な剣技――手数の多さと、どこが本命か悟らせない変幻自在の軌道だ。
しかし、レイの足元は微塵も揺るがない。
白霧の渓谷で掴みかけた、風の動きを察知する五感。それが今、アレンの双剣が放つわずかな風圧の乱れを、正確に捉えていた。
(ここだ――!)
レイは最小限の動きで大剣を斜めに掲げた。
アレンの右の剣を大剣の腹で受け流し、その勢いのまま、左の剣の軌道上へと鉄塊の側面を「滑り込ませる」。
――ギィィィンッ!
金属同士が激しく擦れ合う、甲高音。
アレンの双剣は、レイが完璧な位置に配置した大剣の重厚な壁に阻まれ、完全に威力を殺されてしまった。
「チッ、本当に堅いな……!」
アレンはすぐさま身を翻し、間合いを取り直そうとする。
だが、今のレイは守るだけでは終わらない。
受け止めた大剣の自重をそのまま落下のエネルギーへと変換し、アレンの着地際を狙って一気に振り下ろした。
――ブンッ!!!
凄まじい風切り音が訓練場に鳴り響く。
刃が地面を叩く直前、アレンの鼻先わずか数寸のところで、大剣はピタリと静止した。
全身の筋肉を完璧に制御し、質量を完全に御した寸止めの一撃。
アレンは額から冷や汗を流しながら、両手の双剣をゆっくりと下げた。
「……まいった。ただ重いだけじゃない、完全に俺の動きを読まれてたよ」
アレンは苦笑しながら、髪をかき上げた。
その表情には敗北の悔しさよりも、仲間の圧倒的な頼もしさに対する喜びが勝っていた。
「ありがとうございます、アレンさん。でも、アレンさんのスピードがあったからこそ、僕も全力で合わせにいけました」
レイは大剣を背中の鞘へと収め、深く息を吐き出した。
ただ孤独に鉄塊を振るっていた頃とは違う。
互いの技をぶつけ合い、高め合える仲間がいることが、レイの剣をさらに鋭く、精密なものへと進化させていた。
「よし、それじゃあ体も温まったところで、ギルドへ向かうか。今日はいよいよ、ルミナスでも指折りの危険地帯、『黒岩の巣窟』の依頼を受けるぞ」
アレンの言葉に、レイは力強く頷いた。
新たな仲間と共に、若き大剣使いはさらなる高みへと、その歩みを進めていく。
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