第三十章:ルミナスの夜、交差する剣風
ルミナスの街並みに夜が訪れると、昼間の冷徹な静けさは一転し、あちこちの酒場から賑やかな灯りが漏れ聞こえてきた。
アレンたちに連れられてやってきたのは、ギルドの近くにある『琥珀の灯火亭』。
綺麗に磨かれた木製の机の上には、湯気を立てる肉料理と、なみなみと注がれたエールがこれでもかと並べられていた。
「さあ、まずは俺たちの命の恩人に! 乾杯!」
アレンの掛け声と共に、冒険者たちの木樽が次々とレイの樽に打ち付けられる。
「本当に凄かったよ、レイ。あの霧の中で奴らの動きを完璧に見切るなんてな。俺なんて、鎌の風圧を感じた時にはもう手遅れだったよ」
盾を持っていた大柄な男――ボルグが、豪快に肉を頬張りながら感嘆の声を上げる。
彼らの言葉には、昼間の値踏みするような冷たさはもう微塵もなかった。
あるのは、死線を共にした者だけが分かち合える、純粋な親愛の情だ。
「ありがとうございます。でも、僕も最初は全然当たらなくて……。ただ、前にいた街で『大剣の重さを利用しろ』って厳しく教えてくれた人がいたんです。その言葉を思い出して、とにかく敵の軌道に刃を置くことだけを考えました」
レイはエールを口に含みながら、少し照れくさそうに笑った。
その脳裏には、今もギルムの裏手で細剣を厳しく振るっていた、あの端正なレオンの姿が浮かんでいた。
「なるほどな……。大剣の重さを、ただの破壊力じゃなく、相手の動きを封じる防壁と、迎撃の起点にするわけか」
アレンは感心したように深く頷き、自身の双剣に目を落とした。
「ルミナス周辺の魔物は、素早くてトリッキーな奴が多い。だからこそ、俺たちみたいな軽量の武器使いは翻弄されがちだ。だけど……お前みたいな『絶対にブレない核』を持つ大剣使いが一人いてくれたら、戦況はまるで変わる」
アレンは真剣な眼差しをレイに向けた。
「レイ。もし良ければ、しばらく俺たちの依頼を手伝ってくれないか? もちろん、報酬はきっちり頭割りにする。お前のような男と、もっと一緒に戦ってみたいんだ」
突然の誘いに、レイは驚きに目を見張った。
一人で旅を続け、自らを追い込むつもりでやってきた新天地。
しかし、ここで早くも、自分の大剣を必要としてくれる仲間に出会えたのだ。
背中に立てかけた大剣が、宿の灯りを反射して鈍く輝いている。
レオンに甘えないために街を出た。だが、誰かと背中を預け合って戦うこともまた、冒険者としての大きな強さになる。
「……はい! 僕で良ければ、ぜひ力を貸させてください」
レイは力強く頷き、アレンと再び杯を交わした。
新たな街、新たな仲間。
少年が背負う鉄塊は、今度はルミナスの冷たい霧を払い、新たな絆の物語を紡ぎ始めようとしていた。
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レイの大剣使いとしての旅、そして成長を
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