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大剣の冒険者  作者: beck2026


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第二十四章:新たな土、未知なる風

ギルムの街を後にしてから、早くも半月が経過していた。

 

ひたすら東へと続く街道を歩き続けたレイの前に、ようやく新しい街の輪郭が見えてきた。

国境近くに位置する交易都市、ルミナス。

古くから異なる文化が交差するその街は、ギルムのような荒々しい熱気とは違い、どこか冷徹で、洗練された空気が漂っている。

 

「……よし、まずは宿と、ギルドの場所を確認しないとな」

 

レイは額の汗を拭い、背中の大剣の位置を確かめるように肩を揺らした。

 

半月間の過酷な旅路は、それ自体がレイにとって格好の訓練となっていた。

野宿の夜も欠かさず続けた素振りと、街道沿いで襲いかかってくる野良魔物との実戦。

今や大剣の重みは、彼の身体の重心と完全に一体化している。

歩く姿にも、かつてのような無様なふらつきは一切なかった。

 

ルミナスの重厚な石門をくぐると、舗装された美しい街路が広がっていた。

行き交う人々の中には、見たこともない異国の法衣を纏った者や、全身を風変わりな革鎧で固めた冒険者の姿も多い。

 

レイは周囲の喧騒を通り抜け、街の中心部にあるという冒険者ギルドへと足を向けた。

 

ギルムのギルドが「荒くれ者の酒場」なら、このルミナスのギルドは「冷徹な傭兵の詰所」といった風情だった。

大きな石造りの建物の中は不気味なほどに静かで、受付の前には整然と列が作られている。

誰もが無駄口を叩かず、ただ鋭い目つきで掲示板の依頼書を睨みつけていた。

 

そこへ、泥にまみれた旅装束のレイが入り込んだのだ。

背中には、この街の洗練された武器とは明らかに質の違う、ひどく無骨で巨大な鉄の塊。

 

「……おい、見ろよ」

 

「ギルムの方から流れてきた粗骨な大剣使いか?」

 

低く、値踏みするような囁き声が、冷え切った空気の中に伝わっていく。

しかし、レイはその視線に怯むことはなかった。

かつてギルムで浴びせられた悪意に満ちた嘲笑に比べれば、この程度の冷視など、そよ風のようなものだ。

 

レイは静かに受付へと歩み寄り、自身の冒険者プレートを差し出した。

 

「ギルムの街から来ました。レイです。

 この街での活動登録をお願いします」

 

受付の女性職員は、感情の読めない冷淡な目でプレートを確認し、それからレイの背中の大剣へ視線を走らせた。

 

「レイ様ですね。確認しました。

 ……ですが、忠告しておきます。このルミナス周辺の魔物は、ギルム近郊のものとは生態も強さも異なります。

 特に、この先の『霧の渓谷』に出没する魔物は、ただ力任せに武器を振り回すだけでは、触れることすら叶いませんよ」

 

職員の言葉は、静かだが明確な警告だった。

 

「触れることすら、できない……」

 

レイはその言葉を頭の中で反芻はんすうし、不敵に、しかし謙虚に口元を引き締めた。

レオンが言っていた通り、世界は広い。自分の大剣が通用しないかもしれない戦場が、すぐ目の前に迫っているのだ。

 

恐怖よりも先に、胸の奥から熱い高揚感が湧き上がってくるのを、レイは確かに感じていた。

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