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大剣の冒険者  作者: beck2026


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第二十一章:凱旋と、背中を追う者たち

昼下がりの冒険者ギルドは、いつも通りの気怠い熱気に包まれていた。

 

酒を酌み交わす者、自慢の武器を手入れする者、次の獲物の噂を囁き合う者。

そんな雑多な喧騒の中に、突如として奇妙な静寂が広がっていった。

 

バタン、と重い扉が開く。

 

入ってきたのは、泥と魔物の返り血で汚れ、ボロボロになった二人の男だった。

一人は、ギルムの街でも一目置かれる実力者、細剣のレオン。

その自慢の軽鎧は無残にひび割れ、歩く姿もどこか痛々しい。

 

そして、そのレオンの肩を支えるようにして歩く、もう一人の少年――レイ。

 

レイの背中には、相変わらず身の丈を超えるほどに巨大な、あの鉄の塊が背負われていた。

しかし、その姿を見た冒険者たちの目に、もはや嘲笑の色は一切なかった。

 

「おい、あれって……」

 

「廃鉱山の変異種を、本当に片付けちまったのか?」

 

ざわめきが波紋のように広がっていく。

レイは周囲の視線に目もくれず、まっすぐに受付のカウンターへと向かった。

背中の大剣がごとりと重苦しい音を立て、彼が差し出したのは、あの変異種の巨大なハサミの一部――討伐の証明部位だった。

 

受付の年配職員は、その巨大な殻と、レイの傷だらけの両手を交互に見つめ、深く、深く息を吐き出した。

 

「……見事なものだ、レイ。

 まさか本当に、その鉄クズで怪物を叩き潰してくるとはな」

 

職員の言葉には、最大級の驚きと、確かな敬意が込められていた。

カウンターに置かれたのは、これまでとは比較にならないほどの、ずっしりとした重みを持つ銀貨の袋。

 

レイはその袋を手に取り、少しだけ微笑んだ。

その笑顔には、かつての頼りなさや焦燥感は消え失せ、数々の死線を潜り抜けた者だけが持つ、静かな自信が宿っていた。

 

「レオン。お前が新人を連れて行くなんて珍しいと思ったら……

 とんでもない怪物を育てちまったみたいだな」

 

背後から声をかけてきた別のベテラン冒険者に、レオンは不愉快そうに鼻を鳴らした。

 

「ふん、私は何も育てていない。

 この馬鹿が、勝手に重荷を背負って、勝手に強くなっただけだ」

 

ぶっきらぼうな口調だったが、レオンの目はどこか誇らしげだった。

 

ギルドの片隅で、若手冒険者たちがレイの背中を見つめている。

かつて誰もが「無謀だ」「身の程知らずだ」と笑った大剣。

しかし今、その鉄の塊は、街の誰もが無視できない、圧倒的な「盾と矛」の輪郭を見せ始めていた。

 

始まりの街ギルムに、新たな伝説の足跡が、今まさに刻まれようとしていた。

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