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大剣の冒険者  作者: beck2026


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第二十章:深淵からの生還、そして

暗闇の中に、変異種の巨躯が完全に沈黙して横たわっている。

その岩のような外殻は、レイの一撃によって見る影もなく粉砕されていた。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

レイは地面に突き立てた大剣の柄に、全身の体重を預けていた。

手のひらから滴る血が、鉄の冷たさに触れてじわりと広がっていく。

アドレナリンが切れるにつれ、限界を超えて引き絞った全身の筋肉が、焼けるような激痛を訴え始めていた。

 

一歩でも動けば、そのまま地面に倒れ込んで意識を失ってしまいそうだった。

しかし、レイは必死に目を見開き、暗がりの奥へと視線を向けた。

 

「レオン、さん……」

 

壁際に崩れ落ちていたレオンは、浅い呼吸を繰り返しながら、信じられないものを見る目でレイを見つめていた。

その端正な顔は泥と血にまみれ、誇り高き軽鎧は無残に割れている。

それでも、彼の瞳には確かな生気が残っていた。

 

「……馬鹿者が。誰が……前に立てと言った……」

 

レオンは痛みに顔を歪めながらも、ふっと小さく、自嘲気味に笑った。

その声には、いつもの刺すような冷徹さはなく、どこか深く呆れ、そして感嘆したような響きがあった。

 

「本当に……あの男と同じ、無茶苦茶な一撃を放ちおって……」

 

「……レオンさんが、大剣の重さを利用しろって、教えてくれたからです」

 

レイは足の震えを堪えながら、一歩、また一歩とレオンの方へ歩み寄った。

そして、大剣を背中の鞘へと、ずしりとした重みを感じながらゆっくりと収める。

 

今度は、レイが手を差し伸べる番だった。

傷だらけで、マメの潰れた不格好な右手を、横たわるレオンの前へと差し出す。

 

レオンはそれを見つめ、少しだけ躊躇うような素振りを見せたが、やがて諦めたように深くため息をついた。

そして、レイの手をしっかりと握り返した。

 

「……借りが、増えたな」

 

「いいえ。お互い様、ですから」

 

ぐっと力を込め、レオンの身体を引き起こす。

肩を貸し合い、二人は互いの体重を支え合いながら、静まり返った廃鉱山の坑道を、ゆっくりと出口に向かって歩き始めた。

 

暗い闇の先、坑道の入り口からは、眩いばかりの陽の光が差し込んでいた。

ただ無謀に鉄の塊を背負っていた少年は、この深淵の中で、真の「大剣の冒険者」としての第一歩を、確かに踏み出したのだった。

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