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大剣の冒険者  作者: beck2026


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第十八章:受け継がれる背中

「……はぁ、はぁ……」

 

静まり返った坑道に、レイの荒い呼吸だけが響く。

 

正面には、岩のように強固な外殻を持つ赤黒い変異種。

斜め後ろには、壁に寄りかかったまま動けないレオン。

 

絶望的な状況のはずだった。

しかし、大剣の柄を握るレイの手の震えは、不思議と止まっていた。

 

「レイ……逃げ、ろ……。

 お前では、まだ……っ」

 

苦しげに血を吐きながら叫ぶレオンの声。

レイはその言葉に、振り返ることなく静かに首を振った。

 

「レオンさん。僕に、大剣の重さを『利用』しろって言いましたよね」

 

大剣を正眼に構える。

その姿勢は、毎朝レオンに叩き込まれた、一ミリの無駄もない完璧な軸を保っていた。

 

「あの伝説の冒険者も……レオンさんも……。

 みんな、誰かの前に立って戦ってきたんだ。

 今度は、僕が二人の前に立つ番です」

 

その言葉に、レオンは目を見開いた。

少年が背負う巨大な鉄塊の影が、かつてギルドの誰もが背中を追いかけた、あの豪快な英雄のシルエットと一瞬だけ重なったからだ。

 

――グルゥゥァァアアッ!!

 

変異種が激昂し、地響きを立てて突進してくる。

迫り来る、すべてを噛み砕く巨大なハサミ。

 

レイは引き付けた。

敵の動きが、驚くほどゆっくりに見える。

 

恐怖はない。

ただ、己の肉体と大剣を一つにする感覚だけが、研ぎ澄まされていく。

 

大地の力を足の裏で受け止め、腰へ、背中へ、そして両腕へと伝えていく。

力を入れるのは、刃が当たる――その一瞬だけ。

 

「おおおおおおおっ!!」

 

レイは咆哮とともに、大剣を天高く振り上げ、一歩前へと踏み出した。

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