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大剣の冒険者  作者: beck2026


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第十六章:暗がりの異変

「やりました……。僕、本当に、殻ごと叩き潰せました……!」

 

レイは自分の両手を見つめ、それから大剣の刃に目を落とした。

あれほど硬そうだった地潜りの甲虫アースビートルの死体が、目の前に転がっている。

かつて無様に転がっていた少年は、確かに自らの力で、この鉄塊の強みを引き出してみせたのだ。

 

「満足するのはまだ早い。だが……及第点だな」

 

レオンは細剣の血を払い、鞘に収めながらも、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。

厳しく仕込んできた成果が、こうして目に見える形で現れたことが、彼にとっても誇らしかったのだろう。

 

「さあ、残りの個体がいないか奥を――」

 

レオンが言葉を続けようとした、その時だった。

 

――地響きが、不気味に坑道を満たした。

 

ズズ、ズズズ……と、先ほどまでの甲虫の足音とは明らかに違う、巨大な何かが地を這うような音が響いてくる。

壁の古いランタンが小刻みに揺れ、天井からパラパラと土砂が落ちてきた。

 

「レオンさん、これって……」

 

「おかしい。ギルドの事前調査には、こんな大型の魔物の兆候はなかったはずだ」

 

レオンの表情から瞬時に余裕が消え、冷たい緊張が走る。

 

坑道の奥、暗黒の深淵から現れたのは、通常の甲虫の数倍はある、文字通りの『巨躯』だった。

赤黒く変色した外殻は岩のようにゴツゴツと波打ち、一対の巨大なハサミが、火花を散らしながら激しく開閉している。

 

「……変異種、か!?」

 

レオンの声が、かつてないほどに鋭く尖る。

その魔物が放つ圧倒的な凶気は、先ほどの雑魚とは比べ物にならなかった。

 

赤黒い巨獣は、侵入者である二人をその濁った複眼で捉えると、狭い坑道を揺るがすほどの咆哮を上げた。

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