第十一章:小さな進歩と、芽生える絆
街へと続く帰り道、荒野の風はどこか穏やかに感じられた。
レイは相変わらずフラフラとした足取りだったが、その表情にはどこか充実感が漂っている。
その少し前を歩くレオンは、一度も後ろを振り返ろうとはしない。
しかし、その歩調は、レイの遅い足取りに合わせるように、妙にゆっくりとしたものだった。
「おい、新入り」
不意に、前を向いたままレオンが口を開いた。
「……はい」
「お前、その大剣の扱い、誰に習った?」
「いえ……誰にも。
ただ、この街に来る途中に聞いた、有名な冒険者の言葉が忘れられなくて。
『圧倒的な力があれば、大抵の窮地は叩き潰せる』って……」
レイの言葉に、レオンの背中が一瞬、ピクリと強張った。
レオンは足を止め、ゆっくりと振り返る。
その表情には、驚きと、どこか懐かしむような複雑な色が浮かんでいた。
「……やはり、あの男の言葉か」
「え? あの男って……知っているんですか?」
「ギルムの街で、あの言葉を知らない奴はいないさ。
かつてこの街の最前線に立ち、誰もが背中を追いかけた伝説の男だ。
……だが、あの男の強さは、ただの力任せじゃない」
レオンは自身の細剣の柄に手を当て、真剣な眼差しをレイに向けた。
「圧倒的な質量を誇る大剣だからこそ、ミリ単位の狂いもない『精密さ』と、己の肉体を完全に制御する『技術』が必要なんだ。
今のようにお前が武器に振り回されているうちは、ただの幸運でしか敵を倒せないと思え」
厳しい言葉だったが、そこには明らかな「教え」が含まれていた。
レイはごくりと息を呑み、まっすぐにレオンを見つめる。
「……どうすれば、あの人のように、なれますか?」
レオンはふっと鼻で笑い、再び前を向いて歩き出した。
「まずは、その重荷に負けない体を作ることだ。
明日から、日の出と共にギルドの裏手へ来い。
お前のその不格好な素振りを、少しはマシにしてやる」
「え……っ!? 本当ですか!?」
「気が変わらないうちにな。
それと……新入りではなく、レオンと呼べ」
夕暮れの街道に、レイの嬉しそうな返事が響き渡る。
ただ無謀に鉄塊を背負っていた少年は、今日、初めてその重みを分かち合える「師」であり「友」となる存在を見出したのだった。




