5章-99.高等部入学、お披露目の晩餐会(★)
高等部に入学してすぐに、国中の貴族だけが参加を許される盛大な晩餐会が開かれることとなった。
本格的な授業が開始されるのは、その大がかりな行事が終わった後になるらしい。
私は公爵邸の使用人たちの手によって、これまでにないほど細部まで美しく着飾られた。
鏡の中に映るドレス姿の自分は、まるで見知らぬ誰かのようでどこか落ち着かない。
「お、ルナリア。晩餐会の準備が整ったんだね」
コンコンという軽いノックの音と共に扉を開いて現れたのは、アルだった。
すると、彼の影から小さな銀色の影が勢いよく飛び込んでくる。
「ママ! とっても綺麗! ぴかぴか!」
「ありがとう、エリオス。二人も一緒に参加できれば良かったのだけれど……」
「この晩餐会は、成人したこの国の貴族限定だから仕方ないよ。大人しく留守番してるよ」
アルが肩をすくめて言うと、エリオスは途端にしょんぼりとした。
「僕もママと一緒に行きたかったなぁ……」
「エリオスは他国の王族だからね。あ、ちなみにヴィルはさっき、ひどく暗そうな顔をしてどこかへ行っちゃったよ」
「え? ヴィル、どこか体調でも悪かったのかしら?」
心配になって尋ねると、アルはニヤニヤと意地悪そうに微笑んだ。
「……自分以外の男のために綺麗に着飾った君の姿を、見たくなかったんじゃない? 複雑な男心なんだよ、きっと」
「そ、そうなのかしら……」
「まあ、放っておいても大丈夫でしょ。来週にはいよいよ、ヴィルもお気に入りらしい聖女様も留学してくることだしさ。……今日は何も気にせず、グレンとふたりで楽しんできなよ」
その時、再び部屋の扉が優しくノックされた。
「噂をすれば、本命のお出迎えが来たみたいだね」
アルが楽しそうに告げると同時に扉がゆっくりと開かれ、黒い燕尾服に身を包んだグレンが姿を現した。
いつも以上に美しいその姿に、私の胸がトクンと跳ねる。
「パパ! 黒いお洋服、とってもかっこいい!」
「アル、それにエリオスもいたんだな」
グレンはエリオスの頭を優しく撫で、それから私の方へと視線を向けた。
その瞬間、彼の整った顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
「ルナリア……その、とても綺麗だ……」
「ありがとう……グレンも……いつも以上に、とても格好いいわ」
お互いに普段とは違う特別な装いをしているせいで、部屋の中にどこか甘くて妙な空気が流れ始める。
「さて、俺達は邪魔者にならないうちに退散するよ。グレン、しっかりエスコートしなよ」
アルがグレンの肩をぽんと叩き、名残惜しそうなエリオスの手を引いて部屋を出ていった。
二人きりになった室内で、グレンはゆっくりと私との距離を詰める。
「ルナリア、手を」
「ええ……」
彼の大きな、けれど温かな差し出された手につかまり、私は椅子からゆっくりと立ち上がった。
最終章、五章開始です。
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