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婚約破棄された悪役令嬢ですが、王国を支えていたのは私でした。辺境から始める最強国家建国記  作者: 谷本遥叶


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第7話 封印の魔導師

第7話 封印の魔導師


 暗闇の奥で、紫色の瞳がゆっくりと開く。


「ククク……。」


 低く響く笑い声。


 その声を聞いた瞬間、アストラもアークも凍りついたように動きを止めた。


「まさか……。」


 アストラが震える声を漏らす。


「封印は……確かに完全だったはず……。」


 やがて暗闇の中から、一人の男が姿を現した。


 漆黒のローブ。


 銀色の長い髪。


 整った顔立ちだが、その紫色の瞳だけが異様なほど冷たく輝いている。


 まるで何百年も生き続けてきたような、不気味な存在感だった。


 男は周囲を見渡し、最後にアリアへ視線を向ける。


「……面白い。」


 その一言だけを口にした。


 ダリルは剣を構え直す。


「貴様は何者だ!」


 しかし男は答えない。


 代わりに守護獣へゆっくりと手をかざした。


 すると、赤黒く染まっていた守護獣の額の魔石がさらに禍々しい光を放ち始める。


「ガアアアアアアッ!」


 苦しむような咆哮。


 巨大な身体が暴れ、遺跡の柱が次々と崩れていく。


「まずい!」


 アストラが叫ぶ。


「呪いがさらに強まっています!」


 このままでは守護獣は完全に理性を失う。


 アリアは男を睨みつけた。


「あなたがやったの?」


 男は小さく笑う。


「違う。」


「私は、ほんの少し目を覚まさせただけだ。」


 意味深な言葉だった。


 その瞬間、アリアの脳裏に夢で見た記憶が一瞬だけ蘇る。


 燃え落ちる都市。


 逃げ惑う人々。


 そして、一人の魔導師。


 その背中だけは、はっきりと覚えていた。


(まさか……。)


 アリアが何かを思い出しかけた、その時。


 男は興味を失ったように踵を返した。


「今日は顔を見に来ただけだ。」


「また会おう。」


 次の瞬間、その姿は黒い霧となって消え去る。


「待ちなさい!」


 アリアが叫ぶ。


 だが返事はない。


 遺跡には守護獣の咆哮だけが響いていた。


「アリア様!」


 アストラの声が飛ぶ。


「今ならまだ間に合います!」


 アリアは迷わず守護獣へ駆け出した。


 守護獣も最後の力を振り絞るように牙を剥く。


 あと数歩。


 互いの距離は一気に縮まる。


「お願い……!」


 アリアは右手を伸ばした。


 その瞬間、守護獣も大きく口を開く。


 ダリルは叫んだ。


「お嬢様ぁぁぁ!!」


 次の瞬間。


 アリアの右手が、守護獣の額にある王核へ触れた。


 世界が真っ白な光に包まれる。


 そして彼女の頭の中へ、誰かの声が響いた。


『――契約を承認しますか?』


 だが、その声は一つではなかった。


『承認するな。』


『その契約を結べば、お前はもう人間ではいられない。』


 聞いたことのない、もう一つの声。


 それはアリアのすぐ後ろから聞こえていた。

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