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婚約破棄された悪役令嬢ですが、王国を支えていたのは私でした。辺境から始める最強国家建国記  作者: 谷本遥叶


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第5話 最終管理者

第5話 最終管理者


 ゴォォォォン――。


 地鳴りのような振動が地下遺跡全体を揺らした。


 壁には刻まれた魔法陣が青白く輝き始め、長い眠りについていた施設が次々と目を覚ましていく。


「また揺れました……!」


 エマは思わずアリアの腕にしがみついた。


 ダリルも剣を握り直し、辺りを警戒する。


「この先に何がいるのですか?」


 アリアが答える前に、アークが静かに口を開いた。


「最終管理者。」


「この遺跡のすべてを統括する存在です。」


「敵なの?」


「現在は不明。」


 不明。


 その一言に空気が張り詰める。


「認証に失敗した場合、侵入者と判断されます。」


「その場合は?」


「排除されます。」


 アークの声には一切の感情がなかった。


 アリアは小さく息を吐く。


(ここまでは夢で見た記憶と同じ。)


 だが、その先は分からない。


 夢の記憶はここで途切れていた。


 つまり、これから先は誰も知らない未来だ。


「行きましょう。」


「ですが、お嬢様!」


「ここまで来て引き返すつもりはないわ。」


 そう言って歩き始める。


 長い通路の先には、巨大な扉があった。


 白銀に輝くその扉には、見たこともない古代文字が刻まれている。


 アリアがそっと手を触れた、その瞬間だった。


 カチッ。


 乾いた音が響く。


 重さなど感じさせないほど静かに扉が左右へ開いた。


 その先に広がっていたのは、円形の大広間だった。


 天井は見えないほど高く、中央には巨大な水晶が浮かんでいる。


 水晶の中には、一人の少女が眠っていた。


 腰まで届く銀色の髪。


 閉じられた瞳。


 透き通るような白い肌。


 まるで時が止まったかのように、美しい姿のまま眠り続けている。


「人……?」


 エマが思わず声を漏らす。


 その瞬間。


 水晶に無数の光が走った。


『認証開始。』


 澄んだ女性の声が広間に響く。


『継承者情報を照合します。』


 アリアの右手が淡く輝く。


『魔力一致。』


『血統一致。』


『適性確認。』


『……認証完了。』


 パキン――。


 水晶に一本のひびが入る。


 続いて二本、三本。


 そして。


 ガラスが砕け散るような音とともに、水晶は光の粒となって消えた。


 眠っていた少女がゆっくりと床へ降り立つ。


 閉じていた瞳が静かに開く。


 深い蒼色の瞳だった。


 少女は周囲を見回し、最後にアリアを見つめる。


 そして優雅にスカートを摘まみ、一礼した。


「お待ちしておりました。」


「継承者様。」


 その一言に、ダリルもエマも言葉を失う。


 アリアは少女を見つめ返す。


「あなたの名前は?」


 少女は穏やかに微笑んだ。


「私はアストラ。」


「この都市を管理する最後の管理者です。」


 その瞬間、都市全体が再び大きく震えた。


 ゴォォォォン!


 アストラの表情から初めて笑みが消える。


「申し訳ありません。」


「ゆっくりお話ししたいところですが、その前にお逃げください。」


「……どういうこと?」


「この都市の主電源が再起動したことで、地下最深部に封印されていた存在も目覚めてしまいました。」


 まるでその言葉に応えるように、遺跡の奥から獣の咆哮が響く。


 ォォオオオオオオオッ!!


 空気が震え、天井の砂が降り注ぐ。


 アークが槍を構えた。


「来ます。」


 アストラは静かに告げる。


「継承者様。」


「あなたにとって最初の試練が始まります。」

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