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婚約破棄された悪役令嬢ですが、王国を支えていたのは私でした。辺境から始める最強国家建国記  作者: 谷本遥叶


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第4話 眠れる遺跡の番人

第4話 眠れる遺跡の番人


「……侵入者、確認。」


 低く響く声とともに、地下通路の奥で赤い光が揺らめいた。


 ダリルはアリアの前へ飛び出し、剣を構える。


「お嬢様、危険です!」


 エマも震えながらアリアの腕を掴む。


「逃げましょう!」


 しかし、アリアは一歩も動かなかった。


「大丈夫よ。」


「で、ですが……!」


 赤い光はゆっくりと近づいてくる。


 やがて暗闇の中から姿を現したのは、全身を白銀の鎧で覆った人型の騎士だった。


 人間ではない。


 兜の奥にあるのは、赤く輝く二つの瞳だけ。


 その手には、長い槍が握られていた。


「魔物……ではありませんね。」


 ダリルが呟く。


 騎士は槍を構えたまま、アリアを見つめている。


「個体識別、開始。」


「……認証不能。」


「排除対象と判断。」


 次の瞬間、騎士の姿が消えた。


「速い!」


 ダリルが剣で受け止める。


 甲高い金属音が地下に響き、衝撃で後方へ弾き飛ばされた。


「ぐっ……!」


 王都でも五本の指に入る実力を持つ騎士が、一撃で押し負けた。


 エマの顔が青ざめる。


「そんな……。」


 騎士は再び槍を構える。


 その切っ先は、真っ直ぐアリアへ向けられていた。


「排除を実行──」


「待ちなさい。」


 静かな一言。


 アリアが一歩前へ出る。


「お嬢様!」


 ダリルが止めようとするが、アリアは右手を騎士へ向けた。


 すると、右手の甲に淡い金色の紋章が浮かび上がる。


 騎士の動きが止まった。


「……?」


 赤い瞳が、金色へ変わっていく。


「皇統認証を確認。」


 無機質だった声に、わずかな感情が宿る。


管理兵七番アーク、主を確認。」


 騎士は槍を収め、片膝をついた。


「お帰りなさいませ。」


 地下遺跡が静まり返る。


 ダリルもエマも、目の前の光景を信じられなかった。


「お嬢様……この方は、一体……?」


 アリアは騎士を見つめながら、静かに答える。


「昔、この場所を守っていた番人よ。」


 もちろん、それは夢で見た知識に過ぎない。


 本当に動くかどうかは賭けだった。


 しかし、その賭けは当たった。


「アーク。」


「はい。」


「この遺跡に、まだ動く者は何体いるの?」


 一瞬の沈黙。


 そして、アークはゆっくりと答えた。


「管理兵、百二十八体。」


「整備待機中、四百七十二体。」


「魔導工房、稼働率三%。」


「地下農園、停止。」


「中央魔力炉、残存出力十二%。」


 ダリルは思わず息をのむ。


「百二十八体……?」


 もし、それがすべて動き出せば、一つの騎士団にも匹敵する戦力だ。


 アリアの胸は高鳴る。


(夢じゃなかった……。)


 ここには、本当に未来を変える力が眠っている。


 その時だった。


 アークがゆっくりと顔を上げる。


「ですが、主よ。」


「中央管理室へは、お進みになれません。」


「どうして?」


「現在、《最終管理者》が起動しています。」


 地下深くから、重く低い振動が響く。


 ゴォォォォン……。


 天井から砂が落ち、空気が震えた。


 アークが初めて険しい声を出す。


「間もなく、この遺跡で最も危険な存在が目覚めます。」


 その言葉と同時に、遺跡の最深部から青白い光が天井を貫いた。


 アリアはその光を見つめ、小さく息をのむ。


「……予想より、早いわね。」


 彼女の前に、本当の試練が姿を現そうとしていた。

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