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婚約破棄された悪役令嬢ですが、王国を支えていたのは私でした。辺境から始める最強国家建国記  作者: 谷本遥叶


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第3話 誰も価値がないと言った領地

第3話 誰も価値がないと言った領地


 馬車が王都を出発してから三日。


 窓の外に広がる景色は、緑豊かな平原から次第に荒れ果てた大地へと変わっていった。


「ここが……フェルド地方。」


 エマが不安そうに呟く。


 街道はひび割れ、畑は枯れ、かつて村だった場所には崩れかけた石造りの家々が並んでいる。


「思っていた以上に酷いですね……。」


 護衛騎士のダリルも険しい表情を浮かべた。


「これでは人が住めないのも無理はありません。」


 しかし、アリアは静かに辺りを見回す。


(やっぱり……。)


 夢で見た景色と同じだった。


 荒れ果てた土地。


 崩れた塔。


 誰も近づかない森。


 けれど、それは表向きの姿にすぎない。


「お嬢様?」


「少し寄り道をしましょう。」


 アリアは馬車を街道から外れた森へ向かわせた。


「ですが、この先は魔物が……。」


「大丈夫。」


 迷いのない返事だった。


 森へ足を踏み入れると、空気が変わる。


 鳥の鳴き声が消え、風まで止んだ。


 静寂だけが辺りを包む。


 しばらく進むと、大きな岩壁が姿を現した。


「行き止まりですね。」


 ダリルが首を傾げる。


「ええ。」


 アリアはゆっくりと岩壁へ近づいた。


「普通なら、ね。」


 彼女は岩へそっと手を添える。


 その瞬間。


 ――カッ。


 淡い青い光が岩肌を走った。


「なっ!?」


 エマが驚いて後ずさる。


 岩全体に古い紋様が浮かび上がり、地面が低く震え始めた。


 ゴゴゴゴゴ……。


 巨大な音とともに岩壁が左右へ開いていく。


 その奥には、地下へ続く石造りの階段が現れていた。


「か、隠し通路……?」


 ダリルが思わず剣へ手を掛ける。


 何百年も誰にも発見されなかったような入口。


 しかしアリアは驚く様子もなく、一歩前へ踏み出した。


「やっぱり、残っていた。」


「お嬢様……ここが何なのか、ご存じなのですか?」


 その問いにアリアは振り返り、小さく笑う。


「まだ話せないわ。」


「でも、一つだけ言えることがある。」


 彼女は静かに地下へ続く闇を見つめた。


「この場所こそ、私たちの未来を変える始まりよ。」


 その瞬間、暗闇の奥から低く重い音が響いた。


 ガシャン――。


 まるで長い眠りから何かが目覚めたかのような音。


 続いて、赤い光が二つ。


 闇の中でゆっくりと灯る。


 それは、人の目だった。


「……侵入者、確認。」


 機械のような無機質な声が地下遺跡に響き渡る。


 ダリルは即座に剣を抜いた。


「お嬢様、お下がりください!」


 しかしアリアだけは、その声を聞いて微笑んでいた。


「やっと会えたわ。」


 彼女が探し続けていた”本当の始まり”が、今、ゆっくりと目を覚まそうとしていた。

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