第18話 始まりの都市
第18話 始まりの都市
ゴォォォォン――。
地の底から響く鐘の音は、一度だけでは終わらなかった。
二度。
三度。
鳴るたびに、大地が震え、王核が淡い黄金色に脈打つ。
『施設コード・ゼロ』
『封印解除まで、七十一時間五十八分。』
静かな機械音声が、残酷な現実を告げた。
アリアは画面を見つめる。
「七十二時間しかない……。」
ノクスが静かに頷く。
「あれが完全に目覚めれば、この世界の勢力図は一変します。」
「敵も必ず動きます。」
その言葉を遮るように、大地が大きく揺れた。
バルゼウスだった。
「話は終わったか。」
巨大な魔剣を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべる。
「貴様らが何を企もうと関係ない。」
「ここで全員潰せば済む話だ。」
黒い魔力が再び渦を巻く。
空が暗く染まり、雷鳴が轟いた。
アストラが叫ぶ。
「魔力反応、急上昇!」
「攻撃が来ます!」
バルゼウスは剣を高く掲げた。
「消えろ。」
振り下ろされる巨大な一撃。
その瞬間だった。
「全ガーディアン、前へ!」
アリアの声が響く。
『了解。』
百二十体のガーディアンが一斉に飛び出した。
轟音とともに魔剣を受け止める。
ギィィィィン!!
火花が夜空を埋め尽くす。
「耐えた!」
ダリルが叫ぶ。
しかし次の瞬間、十数体のガーディアンに亀裂が走る。
限界だった。
アリアは強く拳を握る。
(このままじゃ押し切られる。)
その時、王核が再び輝いた。
『創造権限、追加機能を解放します。』
「追加機能?」
『兵装再構築。』
アリアの目の前に、無数の設計図が浮かび上がる。
剣。
盾。
魔導砲。
飛行兵器。
そして、一つだけ異様な設計図があった。
《融合》。
「融合……?」
アリアが触れた瞬間、膨大な情報が流れ込む。
複数のガーディアンを一つに統合し、性能を飛躍的に高める古代技術。
「そんなことが……。」
アストラも驚きを隠せない。
「記録にも存在しない技術です!」
アリアは迷わなかった。
「融合開始。」
黄金の魔法陣が百二十体のガーディアンを包み込む。
一体、また一体と光へ変わり、空中で組み合わさっていく。
巨大な光の柱が天へ伸びた。
そして――。
ドォォォォン!!
光が弾ける。
そこに立っていたのは、高さ三十メートルを超える白銀の巨人だった。
背中には六枚の光の翼。
右手には黄金の大剣。
左腕には巨大な盾。
アストラは震える声で、その名を読み上げる。
「都市最終防衛兵器……。」
「《エクシオン》。」
初めてバルゼウスの表情が変わる。
「……それを残していたか。」
懐かしむような声。
そして次の瞬間。
バルゼウスは笑った。
「面白い!」
「ならば千年ぶりに、本気で遊んでやろう!」
巨大な魔剣と黄金の大剣が激突する。
衝撃で空が裂け、雲が吹き飛ぶ。
誰もがその戦いに目を奪われた。
しかし、その陰で。
誰にも気づかれず、黒衣の男――ノクスは静かに王核へ視線を向けていた。
その瞳には、今まで一度も見せなかった焦りが浮かんでいる。
「……早すぎる。」
「このタイミングで目覚めるなんて。」
彼が見つめる王核の画面には、新たな警告が表示されていた。
『管理者権限、重複を確認。』
『第二の管理者候補を検知。』
アリアはまだ、その表示に気づいていない。
だがノクスだけは、その意味を理解していた。
「まさか……。」
「もう一人の創造王の血族が、生きているのか。」
その一言が、これから始まる戦いをさらに複雑なものへ変えていくのだった。




