第17話 第二都市の支配者
第17話 第二都市の支配者
『第二都市が管理者を要請しています。』
『現在、敵勢力が都市中枢を掌握。』
王核の機械的な声が、静まり返った指令室に響く。
アリアは思わず問い返した。
「敵勢力……?」
アストラが急いで王核へ接続する。
古代文字が次々と流れ、やがて一枚の地図が空中へ映し出された。
フェルドから遠く離れた西方。
深い山脈の地下。
そこに、黄金色に輝く都市が映し出される。
「これが……第二都市。」
だが、その光景は異様だった。
本来は黄金色であるはずの都市の中心部だけが、黒く染まっている。
まるで何かに侵食されているようだった。
『中枢制御室、汚染率七十八%。』
『管理権限、奪取済み。』
アリアは息をのむ。
「都市ごと乗っ取られてる……。」
ノクスは静かに目を閉じた。
「間に合わなかったか。」
「知っていたの?」
「ああ。」
「だから私は、千年間ずっと管理者を探していた。」
彼の視線は黒く染まった都市へ向けられる。
「創造王が造った七都市は、人類を守るための最後の砦。」
「一つでも完全に敵へ渡れば、均衡は崩れる。」
◇◇◇
一方、戦場では。
バルゼウスがアリアを見つめたまま動かない。
先ほどまでの余裕は消え、その眼差しには警戒が宿っていた。
「創造の力。」
「その能力は厄介だ。」
巨大な剣を肩へ担ぎ直し、低く笑う。
「だからこそ、ここで始末する。」
その瞬間、黒い魔力が空へ噴き上がる。
周囲の魔物たちまで力を吸収され、次々と灰になって消えていく。
「魔物を……食べている?」
エマが震える。
アストラは顔色を変えた。
「違います!」
「魔力を吸収しています!」
「このままでは、さらに強くなります!」
バルゼウスの鎧が黒い炎をまとい始める。
その圧力だけで城壁の石が砕けていく。
『危険度更新。』
『四天王戦闘能力、一〇四%。』
「百を超えた!?」
ダリルが目を見開く。
「そんな数字、あるのか!」
◇◇◇
その時だった。
ノクスがゆっくりと前へ出る。
「ここから先は、あなた一人では勝てません。」
アリアは彼を見る。
「どういう意味?」
「創造王は七都市を造っただけではない。」
「それぞれの都市には、一人ずつ守護者が置かれた。」
「守護者?」
「ええ。」
「アストラやグランディアのような存在です。」
ノクスは黒く染まった第二都市を見つめる。
「ですが、第二都市の守護者は敵に支配されました。」
「そして――」
彼は静かに続ける。
「第三都市の守護者は、今も自由です。」
「どこにいるの?」
アリアが尋ねると、ノクスはゆっくり首を振った。
「分かりません。」
「ですが、創造王は最後に言いました。」
『最初の都市が目覚めた時、残る守護者もまた動き出す。』
その言葉が終わると同時に、王核が再び反応する。
『新たな高濃度魔力を観測。』
『座標照合。』
『一致しました。』
アストラが画面を見て凍りつく。
「そんな……。」
「反応が二つあります。」
「二つ?」
一つは第二都市。
そして、もう一つ。
フェルドのすぐ近く。
誰も存在を知らなかった地下深く。
そこに、新たな光が灯っていた。
『未登録施設を確認。』
『古代施設コード――ゼロ。』
ノクスの表情が初めて崩れる。
「まさか……。」
「まだ残っていたのか。」
アリアは問いかける。
「ゼロって何?」
ノクスはゆっくりと答えた。
「七都市を造る前に、創造王が最初に築いた場所。」
「すべての始まりとなった都市です。」
その瞬間。
地面の奥底から、低く重い鐘の音が鳴り響いた。
ゴォォォォン――。
ゴォォォォン――。
王核は最後の警告を告げる。
『施設コード・ゼロ。』
『管理者不在。』
『封印解除まで――残り七十二時間。』
静かなカウントダウンが始まった。
そして誰も知らなかった。
その「ゼロ」に眠る存在こそが、千年前の戦争を終わらせ、そして再び始める鍵になることを。




