第15話 初代創造王の血
第15話 初代創造王の血
「初代創造王の……直系血族?」
アリアは思わず息をのむ。
アストラも信じられないという表情で、水晶に映る古代文字を見つめ続けていた。
「記録に誤りはありません。」
「王核は血統を偽ることができません。」
静まり返る指令室。
ダリルが困惑した表情で尋ねる。
「創造王とは、一体何者なんだ?」
アストラはゆっくりと語り始めた。
「約千年前、この世界は魔王軍によって滅亡寸前まで追い込まれていました。」
「人々は国を失い、文明は崩壊し、多くの都市が地図から消えました。」
「その時、一人の王が立ち上がります。」
「彼は剣ではなく知識で国を築き、魔法ではなく技術で都市を蘇らせ、人々へ希望を与えました。」
「それが――初代創造王です。」
アリアは静かに耳を傾ける。
「創造王は各地に七つの古代都市を建設しました。」
「フェルドは、その第一都市。」
「そして王核は、創造王の血を引く者だけが完全に扱えるよう設計されています。」
エマが首をかしげる。
「でも、お嬢様は公爵家ですよね?」
「王家じゃないのに……。」
その疑問に、アストラも頷いた。
「本来ならあり得ません。」
「つまり千年前、創造王の血筋は何らかの理由で歴史から消されたということです。」
その瞬間だった。
「その通りです。」
低い声が部屋に響く。
全員が振り返る。
いつの間にか、黒衣の魔導師が巨大な水晶の前に立っていた。
「なっ!?」
ダリルが剣を抜く。
ガーディアンたちも一斉に武器を構えた。
しかし男は微動だにしない。
「安心してください。」
「今日は戦いに来たのではありません。」
アリアは鋭く問いかける。
「あなたは誰?」
男は静かに笑う。
「千年前、人類最後の宮廷魔導師。」
「そして創造王に仕えた者。」
「私の名は――ノクス。」
その名を聞いた瞬間、アストラは膝をついた。
「ノクス様……。」
「まさか、生きておられたなんて……。」
しかし、ノクスの瞳には悲しみが宿っていた。
「生きていたのではありません。」
「死ぬことも許されなかったのです。」
彼はゆっくりとアリアへ近づく。
「創造王は亡くなる直前、七つの都市を封印しました。」
「そして、自らの子孫が現れる未来を信じた。」
アリアは拳を握る。
「だったら、あなたはどうして魔物をけしかけたの?」
ノクスは静かに目を閉じた。
「あなたを試すためです。」
「……試す?」
「創造王は最後に私へ命じました。」
『血筋ではなく、資格ある者だけに世界を託せ。』
「私は、その命令を千年間守り続けてきました。」
アリアは首を振る。
「人を危険にさらすことが試練だなんて、間違ってる。」
ノクスは少しだけ笑った。
「その答えを聞けただけでも、来た価値はありました。」
だが次の瞬間、その表情が消える。
「しかし、もう時間がありません。」
「何のこと?」
「奴が目覚めます。」
ノクスは戦場の中央を見つめた。
そこでは四天王バルゼウスが、ゆっくりと空を見上げていた。
そして不気味に笑う。
「懐かしいな……。」
「この魔力。」
彼はアリアを見つめる。
「創造王の血が、再び現れたか。」
次の瞬間、バルゼウスの体から黒い魔力が噴き上がる。
その圧力だけで空が割れ、雲が渦を巻いた。
アストラの警報が鳴り響く。
『緊急警告。』
『四天王バルゼウスの封印制御が消失。』
『第二封印、第三封印……解除。』
数値が急激に変化する。
戦闘能力二八%。
四五%。
六八%。
九一%――。
アストラの声が震えた。
「まずい……。」
「今までのバルゼウスは、封印された状態でした。」
アリアが目を見開く。
「じゃあ、今までは……。」
ノクスはゆっくりとうなずく。
「ええ。」
「本当の四天王は――まだ一度も戦っていません。」
バルゼウスは巨大な剣を大地から引き抜き、静かに笑った。
「では始めよう。」
「千年前に終わらなかった戦争を。」
その一振りだけで、フェルドの大地が真っ二つに裂けた。




