第14話 目覚めた四天王
第14話 目覚めた四天王
――ようやく、外へ出られる。
その一言だけで、大地が震えた。
ズズズズズ……。
地面を突き破り、漆黒の巨腕がさらに姿を現す。
続いて肩。
胴体。
そして、二本の巨大な角。
全身を黒い鎧に包んだ巨人が、ゆっくりと大地へ降り立った。
身長は二十メートルを超えている。
その瞳が開いた瞬間、空気そのものが重く沈んだ。
「な……。」
「こんなの、勝てるわけが……。」
王国軍の兵士たちは、その場に膝をつく。
息をするだけで精一杯だった。
アストラが震える声で告げる。
「識別完了。」
「魔王軍四天王――《黒鉄将軍バルゼウス》。」
「千年前、人類国家を百以上滅ぼした存在です。」
ダリルの顔色が変わる。
「百……?」
そんな化け物が、目の前にいる。
バルゼウスは周囲をゆっくり見渡し、不満そうに鼻を鳴らした。
「魔力が薄い。」
「人間も弱い。」
「千年前より、ずいぶん退屈な世界になったものだ。」
その一言だけで、最前列の兵士たちは吹き飛ばされた。
まだ何もしていない。
ただ放たれた魔力だけで、人間が耐えられないのだ。
クロードは剣を抜き、叫ぶ。
「全軍、攻撃!」
無数の矢が放たれる。
炎魔法が飛ぶ。
氷の槍が空を裂く。
しかし――。
カンッ。
バルゼウスは腕を軽く振っただけだった。
すべての攻撃が霧のように消え去る。
「虫が。」
次の瞬間。
巨大な拳が振り下ろされた。
ドォォォォォン!!
大地が割れ、衝撃波だけで数十人の兵士が吹き飛ぶ。
「いやああああっ!」
「逃げろ!」
王国軍は完全に崩壊した。
◇◇◇
城壁の上。
エマは震えながらアリアを見る。
「お嬢様……。」
「どうしましょう。」
アストラも苦しそうな表情を浮かべる。
「現在の都市戦力では勝率は十八%。」
「……低いわね。」
「ですが。」
「アリア様が王核を完全解放できれば、勝率は七十二%まで上昇します。」
「完全解放?」
「都市の本当の力です。」
「しかし、一度も成功した管理者はいません。」
その時だった。
グランディアが静かに前へ出る。
『主様。』
『お願いがあります。』
「何?」
『どうか、私を信じてください。』
そう言うと、グランディアは胸に埋め込まれた赤い結晶を取り外した。
「それは……!」
アストラが叫ぶ。
「守護獣の命核です!」
『私は千年間、この時を待っていました。』
『この命を使えば、王核は一時的に完全解放できます。』
エマが首を横に振る。
「そんなことしたら……!」
グランディアは穏やかに笑った。
『私は兵器です。』
『ですが、最後に主を守れるのなら、本望です。』
アリアは命核を受け取らなかった。
「駄目。」
グランディアが驚く。
『主様……?』
「私は仲間を犠牲にして勝つつもりはない。」
「あなたも、この街の住人でしょう?」
その言葉に、グランディアは目を見開いた。
千年間。
誰一人として、自分を兵器以外の存在として扱ってくれた者はいなかった。
初めてだった。
“住人”と呼ばれたのは。
ゆっくりと、その瞳から一筋の涙が流れる。
『……ありがとうございます。』
その瞬間だった。
王核が突然、黄金色に輝き始める。
都市全体に鐘の音が響き渡る。
『管理者適性を再測定。』
『条件を確認。』
『都市理念を確認。』
『自己利益ではなく、住民保護を最優先。』
『歴代管理者との適合率を再計算。』
アストラが息を呑む。
「まさか……。」
数字が表示される。
適合率三十二%。
五十%。
七十一%。
九十三%。
そして――。
『適合率一〇〇%。』
その瞬間、都市全体が黄金色の光に包まれた。
防衛塔。
ガーディアン。
城壁。
すべての機能が一斉に再起動する。
だが、それ以上に驚いたのはアストラだった。
震える声で、古代文字を読み上げる。
「最終権限を確認……。」
「管理者アリア・エヴァレット。」
「あなたは都市の管理者ではありません。」
アリアが息を呑む。
「……どういうこと?」
次の表示を見たアストラの顔から、完全に血の気が引いた。
「そんな……。」
「あり得ない……。」
「あなたは……。」
「この都市を築いた『初代創造王』の直系血族です。」
その一言で、千年前から続く世界最大の秘密が、ついに動き始めた。




