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小さなお客さん
「よし」
そのとき。
「何かうまくいったの?」
足元から声がした。
「わっ」
視線を落とす。
濡れた地面の端、融けかけた雪のそばに、小さな男が立っていた。
抱き上げられそうなくらい小さい――けれど、子どもではない。
人間の膝にも届かないほどの背丈の、大人の男だ。
小さな帽子の庇に手を添えながら、穏やかな顔でこちらを見上げている。
「ハルさん。いつからいたの」
「今来たよ」
「全然気づかなかった」
「美月、暖簾ばかり見てたから」
「声かけてくださいよ」
「かけたつもりだったんだけどなあ」
相変わらずだ。
「寒いでしょう。入ってください」
「ありがとう」
ハルさんが暖簾へ向かう。
軒下の灯りが届くところまで来た、そのとき。
ふっと、その姿が揺らぐ。
次の瞬間。
そこに立っていたのは、私より少し背の高い、一人の青年だった。
「こんばんは」
「はい。こんばんは」
ハルさんはそのまま暖簾をくぐり、店の中へ入る。
私はもう何度も見ている光景なのに、なんとなく笑ってしまう。
「何かおかしい?」
「別に」
「そっか」
「はい」
こうして今夜も。
森の奥の里から、コロポックルのハルさんが『おぼろ月』へやってきた。




