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こもれびと、おぼろ月  作者: 日旅こつめ


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使えそうなもの

 次に向かったのは、そこから少し離れたところにある大きなショッピングセンターだった。

 食料品はもちろん、衣料品や生活雑貨、薬局に書店。

 専門店もいくつか入っている。

 平日の昼前でも、入口には買い物袋を提げた人たちが行き交っていた。

「さて。まず何だっけ」

「刃物」

「あ、そうだった」

 館内の案内板を見上げる。

「アウトドア用品……あっちだね」

 売り場へ向かうと、キャンプ用の食器や小さな調理器具が並んでいた。

「こういうの見ると欲しくなるよね」

「キャンプ行かないだろ」

「行かなくても欲しくなるの」

「一番駄目なやつだな」

 棚を見ていたおじいちゃんが、一つの小さなナイフを手に取った。

 刃は短く、柄も細い。

 人間なら、ちょっとした細工や果物を切るのに使うくらいの大きさだ。

「これならどうだ」

「百均のよりだいぶ小さいね」

 私も手に取ってみる。

「ハルさんたちなら、普通の包丁くらい?」

「少し長いくらいだな。柄は向こうで調整できる」

「じゃあ、これにしようか」

 かごへ入れる。

「次は布?」

「ああ」

 衣料品売り場の近くまで移動して、ハンカチを探す。

「花は小さめ。地の色は明るいもの……」

 木綿のものを何枚か広げて見比べる。

「あ、これ可愛くない?」

 淡い生成り色に、小さな青い花が散っている。

 もう一枚は、薄い黄色に白い花。

 それから、淡い桃色に小さな草花が描かれたもの。

「これなら柄も小さいし、向こうで服にしても変じゃないよね」

「俺に聞くな」

「またそれ?」

「仕立て屋が決めることだろ」

「でも指定には合ってる」

「ならいいんじゃないか」

「適当だなあ」

 三枚ともかごへ入れた。

 小さなハンカチが、コロポックルの里では何着かの服になる。

 そう思うと、ただの布なのに少し違って見える。

「……あ」

 そのまま近くの手芸用品を眺めていて、私は足を止めた。

 棚に畳まれていた、麻の布。

「これ、葉月さんにどうかな」

「葉月?」

「山で使えそうじゃない?」

 手に取ると、少しごわついた素朴な手触りがした。

「枝をまとめたり、何か包んだり。冬なら植物を覆うのにも使えそうだし」

「本人が使うかは知らんぞ」

「お土産だからいいの。使い道は葉月さんが決めれば」

 そう言って、麻布を一枚かごへ入れる。

「鹿には掃除用のブラシで、木には麻布か」

「ちゃんと考えてるよ?」

「本当か?」

「本当です」

 おじいちゃんは何も言わず、少しだけ口元を緩めた。

「これで、だいたい揃った?」

「道具はな」

「じゃあ次は?」

「食い物」

「ジャムだ」

 私が言うと、おじいちゃんがこちらを見る。

「今度は忘れてなかったな」

「昨日あれだけ言われたら忘れないよ」

 イチゴのジャム。

 それから、バタークッキー。

 里守の館から届いた立派な封書の中で、たぶん一番強く希望されていた二つだ。

「普通のスーパーのでいいの?」

「駄目だ」

「やっぱり?」

「ユクルがうるさい」

「知ってる」

 今度は私も笑った。

「買い物かご、すっかりいっぱいになっちゃったね」

「お前が余計なもん入れるからだろ」

「お土産は余計じゃないですー」

 レジを通した荷物をマイバッグに詰め込むと、思った以上の重さになっていた。

 外に出ると、買い物を始める前よりも風が一段と冷たく感じられる。

 雲の間から差す日差しもどこか頼りなく、道北の十一月の寒さがじわじわと服の隙間に潜り込んできた。

 おじいちゃんが手早くトランクへ荷物を積み込み、パタンと閉める。

「冷えるな。早く乗れ」

「はーい」

 助手席に滑り込み、シートベルトを締める。

 おじいちゃんがエンジンをかけると、しばらくして暖房の風が流れ始めた。

「で、どこ行くの?」

「ここからそう遠くない」

「おばあちゃんが行ってた店?」

「ああ。ジャムと菓子は、あそこで買ってた」

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