おつかいへ
◇
翌朝。
「……眠い」
朝食の席で呟くと、おじいちゃんが呆れたようにこっちを見る。
「自業自得だろ」
「あと一個だけ作ろうと思ったの」
「何個作った」
「……三個」
「……ったく」
「乗ってきちゃって」
足元では、たびが大きなあくびをしている。
「たびまで眠そうじゃん」
「にゃあ」
「美月に付き合わされたんだろ」
「にゃ」
「ほら」
「たびまでおじいちゃん側なの?」
昨日はずいぶん雪が降っていたけれど、朝にはすっかりやんでいた。
窓の外を見ると、昨日積もった雪もほとんど解けている。
根雪になるまでは、降っては解けての繰り返しだ。
今日は店の休みの日だ。
昨日届いた手紙の品を揃えるため、これからおじいちゃんと旭川へ出ることになっている。
イチゴのジャム。
バタークッキー。
針と糸。
毛糸に、花柄のハンカチ。
小さな包丁や、急須。
それから、店で使う日用品と食材をいくつか。
「ジャム、忘れないようにしないとね」
「忘れたら長がうるさい」
「昨日も言ってたもんね」
「言ってただろ」
私は珈琲をひと口飲みながら、テーブルの端に置いてあった買い物のメモを手に取った。
「結構あるね」
「だから街まで行くんだろ」
「そうなんだけど」
紙をひっくり返す。
「……私の買い物もしていい?」
「勝手にしろ」
「やった」
おじいちゃんは味噌汁をすすりながら、ちらりと時計を見る。
「食ったら出るぞ」
「はーい」
久しぶりに旭川へ出ると思うと、少しだけ楽しみだった。
朝食を片付けて、出かける支度をする。
昨日の雪はほとんど解けていたけれど、日陰にはまだ白いものが残っている。
玄関を出ると、空気は思っていたより冷たかった。
「寒っ」
「十一月なんだから当たり前だろ」
「分かってるけど、寒いものは寒いの」
おじいちゃんは先に車へ向かい、私は戸締まりを確認する。
「たび、行ってくるね」
「にゃあ」
窓の向こうから、たびがこちらを見ていた。
「夕方には帰るから」
「たびは全部わかってるさ」
「でも、大事でしょ」
「そうか」
車に乗り込むと、冷えた座席に思わず肩をすくめた。
「冷たっ」
「すぐ暖まる」
「毎年言ってる気がする」
「毎年寒いからな」
エンジンがかかる。
暖房から出てくる風は、最初だけ冷たい。
私は両手をこすり合わせながら、助手席に買い物のメモを置いた。
「買うもの多いな」
「忘れるなよ」
「メモあるから大丈夫」
「お前、そのメモごと忘れそうだからな」
「そこまで信用ない?」
「ない」
「即答……」
車がゆっくり走り出す。




