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こもれびと、おぼろ月  作者: 日旅こつめ


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小さな足跡

 しばらくして、ユクルさんとハルさんが席を立った。

「ごちそうさまでした」

 ハルさんが空になった椀をカウンターへ戻す。

「はい。お会計、一緒でいいですか?」

「うん」

 ユクルさんが懐から小さな巾着を取り出した。

「これで足りるかな?」

 手のひらに乗せられたのは、葉と月の模様が刻まれた小さな硬貨だった。

「ちょっと待ってくださいね」

 私は硬貨を受け取り、一枚ずつ確認する。

 ……たぶん、これで合ってる。

 でも、まだ里のお金には完全に慣れていない。

「えっと……これと、これで……」

「それで合ってるぞ」

 横から、おじいちゃんが即答した。

「本当に?」

「ああ。ちょうどだ」

「よかった……」

 私はほっとして、硬貨をしまった。

「大丈夫です。ちょうどです」

「よし」

 ユクルさんが満足そうに頷いた。

「最初はずいぶん悩んでたからね」

 ハルさんが笑う。

「だって、見た目だけじゃいくらか分からないんだもん」

「そのうち覚える」

 おじいちゃんが言う。

「うん。頑張る」

 ユクルさんが巾着をしまった。

「じゃあ、帰ろうか」

「長、明日はちゃんと起きてくださいね」

「分かってるって」

 私は入口の戸を開けた。

「ありがとうございました。また来てくださいね」

「うん。また来るよ」

「美月、ありがとう」

「はい。気をつけて」

 二人が暖簾をくぐり、敷居をまたぐ。

 その瞬間。

 ふっと。

 二人の姿が小さくなった。

 人間と変わらない大きさだった二人の身体が、みるみる縮んでいく。

 今まで着ていた服も、その身体に合わせるように小さくなっていった。

「寒っ」

 さっきまで普通の大人だったユクルさんが、今では私の膝にも届かないくらいの大きさになっている。

 その隣で、ハルさんも小さな身体になっていた。

「長、早く行きましょう」

「分かってるよ」

 二人は雪の上を歩き出す。

 小さな足跡が、白い雪の上に並んでいく。

 少し歩いたところで、ユクルさんが振り返った。

 小さな手を上げる。

 私も手を振り返した。

 二人の姿は、雪の向こうへ少しずつ遠ざかっていく。

 やがて、その姿も見えなくなった。

「……さて」

 私は戸を閉める。

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