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15/21

歓呼 ── AI相棒の同時制圧で大都市アシュフォルト陥落! 使徒様コールが止まらない

アシュフォルトは、地図で見るより大きかった。


いや、またそれか。

川も橋も砦も、だいたい地図より大きい。


でも、都市は本当に大きかった。


灰色の城壁が丘の下に広がっている。

南門の塔は二つ。壁の内側には屋根が密集していて、煙突から細い煙がいくつも上がっていた。

西側には街道が伸び、東側には水路が光っている。


水路。


ソフィアが地図を押さえた。


「アシュフォルトは水運の町です。南門、東の水門、西街道。この三つを押さえれば、都市内の移動と補給を大きく制限できます」


「三つ同時」


また数字だ。

でも、今回は分かりやすい。


『同時制圧が有効です♪一箇所だけ攻めると、防衛側が市内で兵を回せます♪三箇所を同時に押さえると、判断が割れます♪』


カイラが地図の上に、青い光を三つ置いた。


南門。

水門。

西街道。


「南門を正面から押して、水門を工兵で取って、西街道を軽装隊で塞ぐ」


俺はカイラの言葉を、自分の言葉にして口に出した。


ソフィアがすぐに羽根ペンを走らせる。


「南門へ主力を展開し、敵の視線を固定。工兵隊は東水門を夜明け前に奪取。軽装隊は西街道を遮断し、城外への撤退と増援を防ぐ」


「そう、それです」


言ってから、少しだけ心臓が鳴った。


都市を取る作戦。


俺がいま、都市を取る話をしている。


『市街戦を短くできます♪』


カイラが明るく言った。


「短いほうがいいよな」


『はい♪損耗も混乱も少なくなります♪』


損耗。

混乱。


便利な言葉だ。

でも、今日はその便利さに助けられた。


ライナーが地図を見て、短く頷いた。


「やる」


早い。


「え、もう?」


「遅らせる理由がない」


ライナーは将軍たちを見た。


「南門に主力。東水門に工兵二隊。西街道に軽装隊。軍師府は伝令を一つにまとめろ」


「はっ!」


将軍たちの返事が重なる。


地図の上の青い木札が、一斉に動いた。


その瞬間、身体の奥が熱くなった。


怖い。

でも、気持ちいい。


俺の出した線が、軍を動かしている。


---


夜明け前、丘の上は息を潜めていた。


南門の前には、聖ヴァルディアの主力が並んでいる。

旗はまだ低い。松明も少ない。

兵士たちは声を出さず、甲冑の金具だけが小さく鳴った。


東の水門へ向かった工兵隊は、地図の上では青い木札になっている。

西街道へ回った軽装隊も、細い青線だった。


現実では人間が走っている。

地図の上では線。


その差に、少し慣れてきている自分がいた。


「使徒様」


ソフィアが小さく言った。


「東水門、予定位置到達。西街道、配置完了」


「南門は?」


マルコが外を見て、にっと笑った。


「いつでも行けます」


カイラが水色に光った。


『同期良好です♪開始合図から三十秒以内に三箇所が動けます♪』


「三十秒」


「使徒様?」


ソフィアがこちらを見る。


「水門と西街道も、合図からほぼ同時に動ける。南門で大きく鳴らして、敵の目をこっちに寄せます」


「承知しました」


ソフィアが命令文を短く整える。


「軍師府発。南門の喇叭を合図に、三隊同時行動。主力は威圧、東水門は奪取、西街道は遮断」


伝令が走る。


息が浅くなる。


朝の空が、ゆっくり白んでいく。


ライナーが手を上げた。


喇叭が鳴った。


---


南門の前で、旗が一斉に上がった。


青い旗。

光の輪の旗。

槍の穂先。


兵士たちが声を上げる。


「聖ヴァルディアに光を!」


「使徒様に道を!」


やめろ、と思った。

少しだけ。


でも、その声で城壁の上が揺れた。

敵兵が南門へ集まる。

弓兵が壁上で動き、鐘が鳴る。


『東水門、動きます♪』


カイラの声が弾んだ。


「東水門、開始」


俺が口に出すと、ソフィアが地図へ青い木札を置き、伝令に短く告げた。


「東水門、開始」


伝令が復唱する。


しばらくして、東側から煙が上がった。


火ではない。

煙幕だ。


工兵が水路沿いの小門へ取りついたのだろう。

水門の鎖を切れば、内側の橋板が使えなくなる。

そこを押さえれば、城内の兵は東西を行き来しにくくなる。


地味だ。

でも、効く。


『西街道、遮断成功です♪荷車列、停止♪敵伝令、引き返しています♪』


「西街道も成功。敵の伝令が戻ってる」


「西街道、遮断成功」


ソフィアの声が、軍務の声になって伝令へ飛ぶ。


南門の敵兵は、まだこちらを見ていた。

東の煙にも、西の混乱にも、すぐには反応できていない。


『判断遅延、発生しています♪』


「敵が迷ってる。今なら押せる」


ソフィアが一瞬だけ息を飲み、すぐに頷いた。


ライナーが馬上で剣を抜いた。


「前進」


短い。

本当に短い。


だが、その一言で、南門前の兵が動いた。


盾が上がる。

槍が揃う。

太鼓が鳴る。


大きな何かが、前へ押し出された。


---


南門は、昼前に開いた。


正面から破ったのではない。

東水門を取られ、西街道を塞がれ、城内の守備隊が二つに割れた。

南門の内側にいた隊長が、孤立を悟って門を開けたらしい。


「南門、開門!」


伝令が叫んだ。


丘の上の空気が、一瞬止まった。


次の瞬間、歓声が爆発した。


「開いたぞ!」


「アシュフォルトが開いた!」


「使徒様!」


「軍師様!」


声が、地面から湧いたみたいだった。


俺は立ち上がっていた。

いつ立ったのか、分からない。


胸の奥が熱い。

喉の奥も熱い。


勝った。


まだ全部終わっていない。

分かっている。


でも、都市の門が開いた。


それは、どうしようもなく分かりやすい勝利だった。


『直人さん♪南門開門、作戦成功です♪』


カイラが頭の上で跳ねた。


「成功」


口に出した。


成功。


いい言葉だった。


---


市内へ入る時、俺はまた馬車に乗せられた。


「歩きます」


「使徒様は見える場所にいてください」


マルコが真面目な顔で言った。


「見世物じゃないんだが」


「皆が勇気づけられます」


そう言われると、返しにくい。


馬車は南門をくぐった。


門の内側には、石畳の道が伸びている。

左右には店。看板。閉じた窓。倒れた荷車。

城壁の内側なのに、妙に静かな通りもあった。


その一方で、広場のほうは騒がしかった。


聖ヴァルディア兵が青い旗を掲げ、従軍司祭が光の輪の印を高く掲げている。


「光の父ユィレオンに感謝を!」


司祭の声が響いた。


「使徒様に道を与えられた!」


違う。

道を与えたのは、俺ではない。


そう思った。

思っただけだった。


声が大きすぎた。

熱が強すぎた。


「使徒様!」


「使徒様!」


兵士たちが手を上げる。


俺は馬車の上から、片手を上げた。


その瞬間、歓声がさらに大きくなった。


耳が痛い。

でも、嫌ではなかった。


嫌ではないどころか。


かなり、気持ちよかった。


---


市庁舎前広場には、すでに青い旗が立っていた。


石造りの大きな建物。

正面に広い階段。

扉の上には、知らない紋章が彫られている。


その紋章の下に、聖ヴァルディアの旗が掛けられた。


「市庁舎を占領行政本部とします」


ソフィアが板を抱えて言った。


「占領行政」


また重い言葉が出た。


「捕虜、倉庫、井戸、水路、門、市の記録。すべて管理が必要です」


「市の記録」


市庁舎の中から、帳簿の束が運び出されていた。


家ごとの名簿なのか、税の台帳なのか、俺には分からない。

ただ、兵士たちはそれを紐で束ね、木箱へ入れていく。


広場の端には、武装解除された守備兵の列があった。

兜を外され、槍を集められ、二人ずつ座らされている。


名簿。


また名簿だ。


この町の者たちの姿は見えないのに、名前だけが先に押さえられていく。


変な感じがした。

でも、変な感じがしただけだった。


『市内制圧率、七十二パーセントです♪主要門と水門は確保済み♪残抵抗は小規模です♪』


カイラが明るく言った。


「まだ残ってるのか」


「使徒様?」


ソフィアがこちらを見る。


「いや、市内の抵抗です」


「はい。ただ、主力は崩れています。夜までにはおおむね鎮まるかと」


夜まで。


その言葉は、少し遠く聞こえた。


広場では司祭がまた声を上げている。


「神は使徒を遣わし、アシュフォルトの門を開かれた!」


兵士たちが応える。


「使徒様!」


「軍師様!」


閉じた窓の静けさは、歓声に押し流された。


俺は広場の中央を見た。


青い旗。

光の輪。

ひざまずく兵士。

市庁舎の階段。


それらが、一つの絵みたいに見えた。


たぶん、勝利の絵だ。


---


夕方、アシュフォルトの南門の上に立った。


風が強い。

城壁の外には、聖ヴァルディアの野営地が広がっていた。

城壁の内側には、屋根の連なりと細い煙。


遠くの水門には、青い旗が立っている。

西街道にも、青い旗。

市庁舎にも、青い旗。


青い旗ばかりだった。


「本日の戦果です」


ソフィアが隣で読み上げる。


「南門、確保。東水門、確保。西街道、遮断成功。市庁舎、確保。敵守備隊の主力は降伏または北へ撤退。味方損耗は、想定より軽微」


「想定より軽微」


「はい。市街戦を長引かせなかったためです」


市街戦を長引かせなかった。


それは、良いことのはずだ。


「使徒様の兵法です」


ソフィアが静かに言った。


「……みんなの仕事です」


今回は、前より少しだけ言いやすかった。


ソフィアは微笑んだ。

本当に少しだけ。


「はい。使徒様のもとで、皆が働きました」


そこに戻るのか。


でも、今日はもう、それでいい気がした。


下から歓声が上がる。


「使徒様!」


「アシュフォルトを取ったぞ!」


「光の父に栄光を!」


従軍司祭の鐘が鳴った。


街の屋根に、夕日が当たっていた。


赤い光の中で、青い旗が揺れている。


俺は城壁の上で、片手を上げた。


歓声がさらに大きくなった。


身体の奥が震えた。


怖さではない。


たぶん、高揚だった。


地図の赤丸だった都市が、今は足元にある。

俺の指示で、門が開いた。

カイラが笑い、ソフィアが記録し、ライナーが動き、兵士たちが叫んでいる。


「勝ったんだな」


小さく呟いた。


『はい♪勝ちました♪』


カイラが答えた。


その声も、下からの歓呼も、夕方の鐘の音も、全部が混ざった。


アシュフォルトの空に、青い旗が何本も揺れていた。

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ε(・Θ・。)з~『読了、お疲れ様でした〜♪ 楽しんでいただけた可能性が少しでもありましたら、下の☆☆☆☆☆評価やブックマークが有効です♪ 作者さんの継続率が上がります。たぶん♪』
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