帰ってきた後。もう一回。
ふと思いついちゃったので投稿です、カスミとセンパイくんが再開したら、というコンセプトです、コウキくん出てきますが空気てます。あーゆーれでぃ?
これは、私が異世界から帰ってきて、ほんの一週間経たないくらいの時の、忘れられない、この世界での再会だった……
「……いってきまず」
私はな、朝は嫌いだ。チュンチュンなく小鳥も、爽やかな透き通るような空も嫌いだ。なんでかって? 低血圧だからだ。
くそ、足取りが、重い、重いぞ。こんなに重いんなら荷物学校においてこれば良かった! むりか!
それは、朝の通学路。私がお受験して勝ち取った公立高校への朝のコンクリート道。2年前、中学生の時に男子どもに隠されていた革靴の音が耳に心地いいぜ。
「おい、ねーちゃん! そんなとぼとぼ歩いてんじゃ電車まにあわねーんじゃね?」
きっ、と少し高めの音が私の耳に響いたと思うと、今度は自転車に乗ったコーキが無礼にも私に話しかけてきやがった。黙れ愚弟。
私が不機嫌さを隠すことなく睨みつけたことがわかったのだろうか、こいついつになったら私が朝に弱いってこと学ぶんだ。むりか、無理だな、バカだもんな。
「あ〜……悪い、えっと、乗ってくか?」
そう言いながら、自転車の後部座席、荷台を目で指すこーき。貴様、私にお荷物になれと? それにだな
「車、電車、新幹線、飛行機、人力車、原付以外の乗り物はピエトルの方が乗り心地いいからいい」
新幹線と飛行機と人力車は実は生まれてこのかた一回も乗っていないから知らないけどな。多分ラクダよりかはいいだろ、じゃなけりゃ文明終わってる。
私の一言には三つの言葉で返事する事を決めさせているはずのコーキは苦笑いしたまんま去って行った、おい、何時もと違う靴にも気づけよ、通学用の革靴だぞ。
「くそ、あいつめ、帰ったら格ゲーで私が勝つまで相手さしてやる」
私がいつも以上に不機嫌でブツブツ言いながら歩いていたのがいけなかったのか? それとも、俯いて歩いてたのがいけなかったのか? 両方か、両方だな。
どかん、あるいはぼすんでもいい。とにかく私はぶつかった。おでこと鼻が同時にぶつかった。舐めてやがるな、私に向かってぶつかってきたやつ、まあ私の方からぶつかったんだけどな。
ふっ、そう、私の方からぶつかったのだ、ならばすることは一つじゃあないか。私はな、あの異世界の旅で色々学んだのだよ。
「……………………ゴメンナサイ」
いかん。リアルの空気に慣れすぎてコミュ症が発動した。このままじゃ私、不機嫌で、ぶつかってきた上、俯いて頭も上げずに謝る頭おかしい女じゃないか。誰だ、その通りっていったやつ、表出ろ。
私が内心反省しているなか、しかし、上からお咎めの言葉も、謝罪を受け取る言葉も聞こえては来なかった。
なんだ、無視か、無視なのか、私が折角謝ってやってるのに無視なのか。
私が訝しく思いつつも顔を上げると、そこにいたのは。
「君は……」
私の頭上から降る声に、私はついにその人物へと目を向けた。どことなく冷めたようなしかし見開かれた目とかちあう。私のことを見下ろす目は、しっかりと私の目を捉えて離さない。
「あ……セン、パイ」
それは、私の、初恋の先輩だった。
☆☆☆
なんだ、一体何が起こっているんだ?! あ、ありのままおこったことを話すぜ? やってられるか!
私は、ついさっきまで私の隣にへいなかった人物と、通学路の小道を一緒になって歩いていた。
え、いやぁ、でへへ。
「ひさしぶり……だな」
「はい……」
センパイの躊躇いガチな声に、一瞬遅れて返事をする私、な、なんだ。心音が邪魔してセンパイの声がよく聞き取れない。
瞬間、私がこのセンパイに抱いている気持ちに気がついた。瞬間、顔中に熱が集まる気がした。気がしただけじゃない! 熱い!
んのぉぉぉぉ〜! まぁて待て待て、良く考えろ、私。観察するんだ、見るんじゃない、観るんだ!聞くんじゃない、聴くんだ!
てか、沈黙が重い! 私が内心でこんな複雑多岐に渡る思考をしているだなんてセンパイは思いもしないに違いない。女は秘密を着飾って美しくなるのよ!
「半年振り、以上か……」
ん? センパイ、それは会話なのか、独り言なのか? それにしてもなんてイケボ……センパイの声だけで私は薄い本もアニメも我慢できちゃう!
はっ、いかん……落ち着け、私よ、折角再会したんだ、再会できたんだ、ここで良い印象を与えなくてどうと言うんだ! 痴態をみせてはぁ、いけない。
「は、はい……確か、センパイの卒業式以来、ですから」
瞬間、私の心に蘇る、苦い記憶。偶然に居合わせてしまった告白されるセンパイ、そして、センパイが9ヶ月思い続けていたという、センパイの初恋の人。
っ……そうじゃんか、私、何思い上がっていたんだろうか、センパイにはな、そう、好きな人がいるんだぞ。私が出る幕なんていうのは最初から、ない。
い、いや……まて、落ち着くんだ、素数を数えるんだ! 素数は1と自分自身でしか割れない孤独な数字、私に勇気を与えてくれる!
「いーち……にー……さーん……しーぃ……ごーぉ……なーな」
ぐ、ぐふふ、そうだ、落ち着け、私悲しみなんかに押しつぶされてはいけない。だって女の子なんだもん? 涙はファイナルウェポンなのだぁ!!
「……もしかして、素数を数えているなら、四は素数じゃないぞ?」
ん? センパイはなかなか変わったことを言うな、私は素数なんて……数えていた!! し、しかもまさか、声に出していただと?! しかも間違えているだと! し、しんでしまいたい。お経があったら詠まれたい。
「あ……ほ、本当ですね、は、はは」
私は、無理して、そうめっちゃくちゃ顔面中の筋肉を総動員して悲壮感に包まれた表情筋を笑顔にした。歪ゆでたらどうしよう。それどころか明日は顔面筋肉痛だな、顔に貼っても目が痛くならない湿布はまだ開発されないのか!?
「――は、っはは、ところで、高校は、どこに行っているんだ?」
その時、歴史は動いた。さらば私の悲壮感。先輩の笑顔、可愛いですね、無理とは言わないので舐めまわさせてください。おっと、いけない、これじゃあ私が変態見たいじゃあない。表情筋がこれ以上緩むと唾液が出てくる。いかんいかん。
「高校は……センパイの、隣の公立高校を……」
ふ、私は確かに、センパイとは別の高校へ行った、受験の時もセンパイの影が尾を引いていたのは認めるさ、うん。でもな、あれだ。それは未練だから仕方ないんだよ!! だってな、そりゃあな! もしかしたら下校途中に電車の中でばったりエンカウントしちゃったりとかで、デュフフなイベントが立つかもしれないじゃないか! 現にイベントが! イベントが! フラグいつ立った!
私の言葉に、また僅かに表情を緩めるセンパイ、細められた目が始めてあった時の冷めた目とは信じられないほどに優しい光をたたえている。畜生、うっとりしちまうじゃねえかよ!
だが、再び私の心に暗雲の妄想の影が伸びる。センパイ、あの時言っていた初恋の人にも、おんなじような目を向けているんだろうか。そしたらこのセンパイのいい男っぷりの事だ、絆されない女なんかいないはずだ! と、ともなると、薄い本の中でしか見たことがないようなあんなことや、こんなことが……!!
いやぁーー! そんなのいやぁーー!
「お……オレの行ってる高校知ってたんだな……」
センパイが優しげな視線を私に送るまま、私に話しかける。ふ、さらば悲壮感、お前ごとき私のセンパイの敵ではない!
「は、はい……もしかしたら、何処か、電車の中や駅で、会ってるかもしれませんね……」
私も、緩まり続ける顔面筋を精一杯引き締めながらも零れる笑みを抑えきれないでうなづいた。まあ、多分あり得ないけどな、もしセンパイが駅とか電車とかにいたら私気づくもん。とか、私が思っ話てた矢先。
センパイが、突然足を止めた。足の長いセンパイはそれより遅く止まったはずの私よりもわずか先に身体があった、その足の長さほんの少しでいいから分けてくれませんか?
私がそんな思いを込めて、センパイのスラックスに包まれた足から、顔へと視線を移動したら、再び、しかし今度は真剣な、寧ろ熱を帯びたセンパイの瞳とかち合った。
え、なになに? ドキドキ。
「いや、それはないよ」
期待していた私の耳に届いたのは無情な、否定の言葉だった。わかっていたこととは言え、改めて、しかも真剣な表情をして言われると胸にこみ上げてくるものがある。どうしよう、私マゾの扉を開きかけたかもしれない。
私は、胸を刺す痛みをごまかすために、一目散にうつむいた。耐えろ、私の涙腺、タマネギ着る時はあんまりでないじゃないか、やっぱり鼻栓のおかげなのか!
「そ、う……ですよね、そんな偶然……あ、あの電車の時間も迫ってると思いますから、失礼しま――」
す。と、言おうとして、センパイの横を通り過ぎようとした時だった。身体が半ばセンパイを追い越し、センパイの顔が完全に見えなくなった、その時だ。
「待てって、最後まで聞けよ!」
突然、私の右手が……鞄を持っていないガラ空きの手首が、センパイに掴まれてしまった。手首にじっとりと湿った感覚が走る。センパイの手汗だろうか、乾く前に舐めておこう。
私の、貧弱な手首が、センパイの男らしい、ゴツゴツした手に掴まれて数秒、今だ私はセンパイの方を向けずにいた。流石にみっともなく醜い泣き顔を晒すわけには行かない。女の涙はここぞという時に使うもんだとパパが言ってた。
「……」 「……」
お互いの、数秒の沈黙を先に破ったのは、先輩の方だった。
「もしも、お前と、駅や……電車出会ったら――」
一瞬、センパイの言葉が詰まる。まさか、今考えてるのか?! 違った。
「わかるよ……お前の事なら、駅出会っても、電車出会っても……お前なら、絶対」
その言葉に、私はついに振り向きざるえなかった。三再び、センパイと視線がかち合う。一回目の冷めた目でも、二回目の優しげな目でもない。熱に浮かされた少年の様に、何処か潤んだ目が、顔を耳まで、トマトの様に赤くしたセンパイが、そこにいた。
瞬間、私の心臓にも、直接熱湯が送り込まれたように、ドクドクと響き出した。身体中が、あつい。
二回。迷いげにセンパイの口が、開かれ、閉じられた。目も、悩ましげに私からそらされ、そして何度も邂逅した。
そして――
「あの時……オレの、卒業式の時に、オレは、お前を探してたんだ」
センパイが、再び口を開いた。私は何も言えない。今口を開いたら緊張しすぎて吐いてしまいそうだ。
「でも、お前は見つからなくて……その、あの時、本当にお前に言いたかった言葉を……――」
パパ、神様、センパイ。
今度こそは、期待しても、いいですか?
感想お待ちしております!




